1. 「預言者」 (“Emissary”)
物語は、ウルフ359の戦闘で宇宙艦隊のオフィサーであるベンジャミン・シスコが妻ジェニファーを失う場面から始まる。この戦闘では、宇宙艦隊の指揮官ジャン=リュック・ピカードがボーグにより強制的に「ロキュータス」として同化され、連邦に対する破壊的な攻撃を指揮していた。シスコは、妻が閉じ込められた区画に駆けつけたものの、避難の時間がなく彼女を救出することができず、助けられなかったことに深い罪悪感を抱き続けている。
数年後、シスコは連邦からディープスペースナイン(DS9)の司令官として赴任するよう命じられるが、当初この任務に対して乗り気ではなかった。DS9への赴任過程でシスコはピカードと会見するが、妻の死に間接的に関わった存在としてピカードを複雑な感情で見つめる。一方で、ピカードもまたウルフ359での自らの行動に深い責任を感じており、ボーグに操られていたとはいえ、多くの命を奪ったことへの悔恨があると感じている。この会見でシスコは、DS9への赴任に消極的であることを正直に伝えるが、ピカードは冷静にその責務を説き、シスコに考えを改めるよう促す。
DS9に着任したシスコは、ステーションの荒廃した現状に失望しながらも、そこで様々な人物と出会う。ベイジョーの反乱戦士であるメジャー・キラ・ネリスはDS9の副司令官として任務に当たっており、独立心の強い彼女はシスコを疑念の目で見ている。また、ステーションの治安責任者であるオドーは、正義感が強く、変身能力を持つ不思議な異星人である。さらに、フェレンギ人の酒場経営者クワークは、時に協力的でありながらも自己利益を最優先する性格の持ち主である。加えて、エンタープライズから移籍してきた技術主任マイルズ・オブライエンも新たにDS9の設備管理を任されており、その技能でステーションの復旧に尽力する。
また、シスコは旧友のジャッジア・ダックスとも再会する。ダックスは科学士官としてDS9に配属され、シンビオントの「ダックス」を継承したことで、新たな姿でシスコの前に現れた。二人の親しみ深い再会の場面は、シスコにとっても新しいスタートの象徴となっている。さらに、医療主任のジュリアン・バシアも初めて登場し、新しい配属地での冒険を楽しむ気持ちを見せ、ダックスに興味を示して積極的に親しくなろうとする姿勢が見られる。
その後、シスコはベイジョー人の宗教指導者カイ・オパカと出会い、彼が「預言者」の使者、すなわちベイジョーの未来を導く特別な役割を持つ存在であることを告げられる。オパカはシスコに「あなたは使者です」(”You are the Emissary.”)と伝え、ワームホールにいる「預言者」と出会い、ベイジョーの未来を導く役割を果たすよう促す。
シスコはステーションの仲間と共にワームホールの調査を開始し、その内部で預言者たちと出会う。預言者たちとの対話を通じ、シスコの心の奥底にある深い悲しみと罪悪感が浮き彫りになる。彼らはジェニファーを救えなかった自責の念が彼を過去に縛り付けていることに気づき、「It is difficult to forgive yourself.”(「自分を許すのは難しい」)と語りかける。シスコはこの対話を通して過去と向き合い、自分を許すことの重要性に気づく。帰還後、シスコはこの経験を通じて得た新たな決意をピカードに伝え、「I am ready to take on the responsibility here, sir.」(「ここでの責任を引き受ける覚悟ができました」)と述べる。この発言により、シスコは前向きに新しい任務に取り組む姿勢を明らかにする。
シスコはDS9をワームホールの近くに移動させる決断を下し、DS9が宇宙貿易や外交の重要な拠点としての役割を担うことを目指す。このエピソードは、シスコが過去の喪失と向き合い、新たな使命に向けて歩み出す姿を描き、彼の人間性と使命感、運命的な役割を強調している。
2. 「過去からの亡命者」 (“Past Prologue”)
物語は、ディープスペースナイン(DS9)に向かうベイジョー人の船がカーデシア軍に追われている場面から始まる。逃げ込んできた男は、かつてのベイジョー反乱戦士であるタナ・ロスであり、DS9に到着後、政治的亡命を申請する。彼の行動には謎が多く、シスコは亡命を受け入れるかどうか迷うが、ベイジョーとカーデシアの間の微妙な緊張関係を考慮し、亡命を許可する決断を下す。副司令官キラ・ネリスもタナとは旧知の仲であり、かつて共に戦った同志として彼の亡命を強く支持するが、過去の友情と今の立場の間で葛藤を抱く。
タナの亡命はDS9の関係者に波紋を広げる。特にオドーは、彼が現在もベイジョー独立運動の過激派「カイロン・ネサル」とつながっているのではないかと疑念を抱く。さらに、フェレンギのクワークがタナに物資を提供している様子を見たオドーは、彼の動向を密かに監視し始める。やがて、タナがカーデシアとの和平を望んでいるわけではなく、実際にはさらなる戦闘行為を画策していることが判明する。彼はワームホールを破壊しようと計画しており、これによりベイジョーが再び孤立し、カーデシアの脅威から逃れられると信じている。
シスコはタナの計画を知り、これがベイジョーと連邦に重大な影響を与えることを危惧する。キラはかつての戦友であるタナを説得しようと試みるが、タナの過激な思想は変わらず、二人の間には深い溝が生まれる。キラは最終的にシスコに協力し、タナの計画を阻止するため、彼を逮捕するという決断を下す。この行動を通じてキラは、現在の自分の立場とベイジョーの平和への責任を受け入れる覚悟を見せる。
タナは拘束され、彼の計画は阻止されるが、キラにとっては苦渋の選択であった。かつての戦友を裏切るような形での逮捕に、彼女は深い葛藤を抱えながらも、DS9における新たな任務の責務を果たした。シスコは彼女の決断を認め、彼女が今の立場に適応しつつあることを評価する。物語は、キラが過去の戦士としての自分を見つめ直し、新たな役割に踏み出す成長を描くエピソードである。
3. 「とらわれし者」 (“A Man Alone”)
物語は、DS9の治安責任者であるオドーが、かつて逮捕したベイジョー人の犯罪者イボデンとステーション内で再会する場面から始まる。イボデンはカーデシア占領期に悪事を働いたことで知られ、オドーはその過去から彼を警戒しているが、現在の法では彼を拘束する理由がない。その後、イボデンが殺害され、オドーがその容疑者として疑われる事態が発生する。クワークをはじめとするDS9の住民たちは、オドーの変身能力と正体不明な出自に対する不信感から彼に疑惑の目を向け、彼を追い出そうとする動きが広がっていく。
このエピソードで初登場するのが、ケイコ・オブライエンである。ケイコはマイルズ・オブライエンの妻であり、エンタープライズの元乗組員である彼女は、DS9で子供たちの教育環境が不足していることを懸念し、新たに学校を開設することを決意する。ケイコの提案により、他の住民も子供たちの教育に関心を示し、学校設立の動きが始まる。これにより、DS9は単なる宇宙ステーション以上の、家族が生活できるコミュニティとしての役割が強調されるようになる。
一方、シスコはオドーの無実を信じ、ジュリアンやジャッジアとともに捜査を開始する。オドーが容疑者にされた背景には、彼の「形状変化能力」があり、ステーションの住民たちはその特異な能力に対して恐れを抱いていた。キラもまた、オドーの無実を証明しようとするが、オドー自身が周囲との距離を保ち続けてきたため、彼を擁護することが難しくなっている。シスコたちは捜査を進める中で、イボデンが自らのクローンを作成し、そのクローンを殺害することでオドーに罪を着せようとしたことを突き止める。
この陰謀が明らかになると、オドーは容疑を晴らされるが、DS9の住民たちとの溝が埋まるわけではない。オドーは人々から距離を置き、自らの存在を守るために孤立することを選ぶが、シスコやキラとの絆は強まっていく。シスコは住民たちに向け、「No one is guilty without evidence.」(「証拠なしで誰も有罪にはならない」)と語り、無実のオドーを擁護する姿勢を示す。この言葉を通して、シスコはオドーへの信頼を表明し、彼がDS9での立場を守りながら、孤独の中で自身の役割を見つけていく支えとなる。
このエピソードは、オドーが自らの過去や特殊な能力と向き合いながら、孤独を抱えて職務を果たす姿を描き、彼の人間性とシスコたちとの絆が深まる様子が描かれている。
4. 「バベル」 (“Babel”)
物語は、DS9の機能に不具合が相次いで発生し、技術主任のマイルズ・オブライエンが原因を特定しようとする場面から始まる。オブライエンはステーション内のシステムを修理する中で、カーデシア占領時代に仕掛けられた「バベル症候群」というウイルスを意図せずに解放してしまう。このウイルスは感染者の言語中枢を攻撃し、話す言葉や聞く言葉が意味不明に変わってしまうという特徴を持っており、次第にDS9全体に広がっていく。
最初に症状を示したオブライエンは、他のクルーや住民にもウイルスが感染していく様子を目の当たりにする。シスコ、キラ、ジャッジア、ジュリアンも次々と感染し、コミュニケーションが不可能になり、事態は深刻化していく。ウイルスは空気感染し、あっという間に広がりを見せ、DS9は混乱に陥る。ジュリアンは必死に治療法を探るが、ウイルスはカーデシアによって複雑に改変されており、解毒剤の開発が難航する。
この中で、キラは感染源を突き止め、解決の鍵を握る情報を得ようとする。彼女はカーデシア時代にステーションで働いていたバイオエンジニアを探し出し、その協力を得て治療の手がかりを掴むことに成功する。キラの行動は感染症対策の最後の希望となり、彼女が入手した情報を基に、ジュリアンが解毒剤を完成させる。
最終的にジュリアンは解毒剤を作成し、ステーション内の全員が治療を受けることで、DS9は危機を乗り越える。シスコはこの出来事を通じて、DS9が単なる宇宙ステーション以上の、さまざまな種族が共存する場所としての意義を再確認する。エピソードは、DS9のクルーたちがいかに協力して危機に立ち向かうかを描き、各自がステーションにおける役割を果たし、結束を深めていく姿が強調される。
5. 「謎のサークル」 (“Captive Pursuit”)
物語は、DS9に初めてガンマ宇宙域からの来訪者が現れる場面から始まる。ステーションに到着した異星人の名前は「トスク」で、彼は驚異的な隠密技術とサバイバルスキルを持つ特殊な存在である。トスクはジュリアンとシスコに出迎えられるが、周囲に警戒心を抱き、不審な行動を見せる。彼の修理の要請に応じたマイルズ・オブライエンは、トスクの謎めいた態度に興味を抱き、交流を深めようとする。オブライエンはトスクが常に用心している様子に疑問を抱きながらも、彼の隠れた事情に次第に気づき始める。
やがて、トスクを追跡する異星人の「ハンターたち」がDS9に到着し、トスクの正体が「生まれながらの獲物」であることが明らかになる。トスクの種族はガンマ宇宙域で行われる狩猟儀式のために遺伝的に作られており、トスク自身もこの宿命を誇りとして受け入れている。彼はオブライエンに向かい、「I live to be hunted.」(「私は狩られるために生きている」)と述べ、獲物としての生き方が彼の矜持であることを強調する。さらに、「I am Tosk.」(「私はトスクだ」)という短い言葉に、彼が自らの役割と運命を全うする覚悟を込めており、オブライエンもその生き方に敬意を抱く。
オブライエンはトスクの境遇に同情し、彼が自由に生きる機会を与えたいと強く望む。トスクに対し、「I have no use for your life as prey.」(「お前が獲物として生きるのは望んでいない」)と語り、彼が自らの意志で生きる道を選ぶことを勧める。トスクはオブライエンの助力に感謝し、「友人」としての関係が築かれる。オブライエンはシスコに相談することなく独断で行動し、ステーション内のセキュリティシステムを無効化してトスクを逃がそうとする。この過程でオブライエンは自身の信念をもとにトスクを助け、彼の自由を取り戻すために尽力する。
最終的にトスクはハンターの追跡を逃れ、自由の身としてガンマ宇宙域へと戻っていく。オブライエンはシスコから非難されるが、異文化理解と友情の重要さを学んだことで自らの行動に満足している。シスコもまた、オブライエンの行動を理解しつつ、異なる価値観への対応の難しさを再確認する。トスクとの出会いを通じ、DS9のクルーたちは未知の文化や価値観と向き合い、共存するために互いを尊重することの大切さを学ぶエピソードである。
6. 「無法者」 (“Q-Less”)
物語は、シスコの旧友であり考古学者のヴァッシュがDS9に到着し、同時に異常現象が発生し始めるところから始まる。ヴァッシュはかつてエンタープライズでジャン=リュック・ピカードと冒険を共にした人物であり、現在はガンマ宇宙域から戻ってきたばかりである。しかし、彼女には思いがけない同伴者がいた。かつてエンタープライズで騒動を引き起こした存在である「Q」だ。Qは自らの娯楽のためにDS9に現れ、ヴァッシュと再会するとともに、シスコやDS9のクルーをからかい始める。
Qの登場によって、DS9では謎めいたエネルギー障害が発生し、システムに異常が続発する。シスコはQの干渉を疑い、Qに対して冷静に警告するが、Qは彼を軽くあしらいながら騒動を楽しむ。Qはヴァッシュと共に過ごしていたガンマ宇宙域での冒険について言及し、彼女に対して興味を示し続けるが、ヴァッシュはQの干渉に嫌気がさしている。ヴァッシュはガンマ宇宙域で手に入れた希少な宝石をオークションにかけようとするが、その宝石こそがステーションに影響を与えている原因だと判明する。
シスコはQに挑発されるが、冷静さを保ちながら対応する。Qとの対峙で、シスコはピカードとは異なるリーダーシップを見せ、Qを一発殴ることで「私はピカードとは違う」と示す。Qもシスコの冷静さと決断力に少なからず驚き、騒動の鎮静化を余儀なくされる。その後、ジュリアンとジャッジアが宝石の異常なエネルギーを解析し、それがエネルギーの爆発を引き起こす可能性があることを発見する。ヴァッシュは、宝石を手放すことでステーションを守ることを決断し、Qの干渉も収束する。
最終的に、Qは去り、シスコたちは再び平穏を取り戻す。ヴァッシュは自らの利益を優先しつつも、ステーションを守るために宝石を諦め、ガンマ宇宙域での冒険の終わりを迎える。エピソードは、シスコがQに対して毅然とした態度を示し、DS9のリーダーとしての強さを発揮する場面を描いている。また、ピカードとは異なるシスコのリーダーシップのスタイルが際立つエピソードでもある。
7. 「ダックス裁判」 (“Dax”)
物語は、DS9の科学士官ジャッジア・ダックスが突然ステーション内で襲撃され、異星の武装集団に拉致されそうになるところから始まる。彼女を襲ったのはクライオン星の武装集団で、リーダーであるイリアンは、かつてダックスが宿っていた前の人格「クゼン・ダックス」が自分の父を殺害したと主張している。イリアンは、ジャッジアにその罪を償わせるため、ダックスをクライオン星で裁判にかける意図を持っていた。
DS9で開かれた裁判では、ジャッジアがクゼンの罪に責任があるかどうかが問われる。ジャッジアは寡黙で、自らの無実を訴えようとせず、黙って裁判に臨む。シスコは彼女を弁護し、トリルの文化におけるシンビオントと宿主の関係について説明を試みる。彼は裁判官に対し、「現在のジャッジアと過去のクゼンは別の存在である」と主張し、シンビオントと宿主が一体であるものの、それぞれ独立した存在として扱うトリルの文化を理解するよう訴える。この論点は異星人であるクライオン星人には理解しにくく、裁判は難航する。
一方で、ジュリアンやキラはダックスの過去を調べ、クゼンが実際に罪を犯したかどうかの証拠を探す。彼らの調査により、ジャッジアが自らの誇りやトリル社会における責任感から、過去の罪を黙って背負おうとしていることが示唆されるが、シスコは彼女に対し、「今の自分として生きるために戦うべきだ」と説得する。
最終的に、シスコの弁護と仲間たちの尽力により、裁判は「今のジャッジア・ダックスには過去の罪の責任がない」との判断に至り、彼女は無罪を勝ち取る。ジャッジアは無言のままながらも、シスコや仲間たちの支援に感謝の意を示す。このエピソードは、シンビオントと宿主の複雑な関係をテーマに、トリル文化の一面を深く掘り下げるとともに、シスコがダックスを信頼し、友人としての絆を発揮する場面が強調されている。
8. 「亡霊の囁き」 (“The Passenger”)
物語は、シスコとジュリアンが船でベイジョーのパトロール任務に出かけ、遭難信号を受け取る場面から始まる。救出した船の中には、呼吸困難の状態で倒れているエンジン技師と、彼を襲った犯罪者「ラオス」がいた。ジュリアンはラオスが瀕死の状態であることを確認しながらも救命処置を行うが、ラオスは「He’s not dead… I am not dead.」(「彼は死んでいない…私は死んでいない」)と言い残し、そのまま息を引き取る。
ラオスの死後、DS9では謎の事件が発生し始める。オドーは、ラオスの意識が他の誰かに乗り移っているのではないかと疑念を抱き、クルーの中に彼の人格が潜んでいる可能性を警戒する。次第にジュリアンが奇妙な行動を見せ始め、シスコたちはラオスの意識がジュリアンに移っているのではないかと疑いを抱く。ジュリアンの中にラオスの知識や癖が現れ、彼がシステムを操作し、DS9に重大な被害を与えようとする行動に出る。
シスコやオドーは、ジュリアンに宿るラオスの意識を引き離し、彼の犯罪計画を阻止しようとする。最終的に、オドーがラオスの計画を見抜き、ラオスの意識をデータバンクに封じ込める方法を考案する。シスコとオドーは、DS9のシステムに侵入しようとするラオスの意識を阻止するために全力で対策を講じ、ジュリアンの身体からラオスを完全に排除することに成功する。
このエピソードは、未知の意識転移技術や、信頼する仲間に潜む敵の恐怖を描き、シスコやオドーが協力してDS9を守る姿が描かれると同時に、ジュリアンがクルーの信頼を取り戻す姿も強調されている。
9. 「未知への体験」 (“Move Along Home”)
物語は、ガンマ宇宙域からの訪問者である「ワディ」と呼ばれる異星人がDS9を訪れる場面から始まる。ワディたちは外交目的でやってきたかに見えたが、実際にはゲームへの関心が強く、DS9のカジノで遊ぶことを最優先している。クワークは彼らが持つ高価な宝石に目をつけ、ゲームでそれを得ようとするが、ワディが持ち込んだ謎のゲーム「シャレラ」に巻き込まれてしまう。
クワークがこのゲームを操作し始めると、シスコ、キラ、ジャッジア、ジュリアンが突然異次元の世界に引き込まれ、奇妙な試練に直面することになる。彼らはこの異世界でさまざまなパズルや難題に挑み、進むべき道を見つけるために協力するが、ゲーム内の彼らの行動が現実のクワークの操作に左右されるため、危険が増していく。クワークは当初軽い気持ちでゲームを進めていたが、やがてシスコたちの命に関わることを知り、動揺しながらも必死に彼らを助けるためゲームを続ける。
異次元の試練の中で、シスコたちは互いの信頼と協力が不可欠であることを実感し、チームワークを発揮して次々と難題を乗り越えていく。最終的に、彼らはゲームの最終試練を突破し、現実世界に戻ることができる。ゲーム終了後、ワディのリーダーは「シャレラはただのゲームだ」と語り、「Move along home」(「帰り道へ進め」)と告げる。これは、ワディ人にとって命懸けの試練が単なる娯楽に過ぎないことを示している。
シスコは、この経験を通じて異なる価値観や文化を持つ種族との関わり方の難しさを再認識する。一方、クワークも自分の軽率な行動が他者に重大な影響を及ぼすことを痛感し、異文化の理解と責任を学ぶこととなる。このエピソードは、ワディの「帰り道へ進め」という言葉が単なるゲームの言葉でありながら、シスコたちにとっては生死を分かつ意味を持つことを通じて、異文化間の感覚のズレとその理解の難しさを強調している。
10. 「フェレンギの王」 (“The Nagus”)
物語は、フェレンギ人の実力者であるグランド・ネーガスがDS9を訪れる場面から始まる。ネーガスはフェレンギ連盟を統率する存在であり、その権力は絶大である。DS9に来たネーガスは、クワークの酒場を舞台にしたフェレンギの集会を開催し、次世代のリーダーを指名するための計画を進める。ネーガスは突然クワークを次期グランド・ネーガスに任命し、周囲を驚かせるが、クワークはこの新たな立場に不安を抱きながらも、権力を得ることに喜びを感じ始める。
しかし、ネーガスがDS9を離れるとすぐに彼の部下たちはクワークを暗殺しようと試みる。フェレンギ社会において権力争いは激しく、ネーガスの地位を引き継いだクワークもその標的にされる運命にある。クワークの弟ロムも、この状況の中で兄を裏切るように誘われるが、最終的には兄を守るために助け舟を出す。ロムはフェレンギの慣習に従いながらも、家族の絆を選ぶことで、兄弟としての誠実さを示す。
一方、シスコの息子ジェイクは、フェレンギ人の少年ノーグと友情を深めつつある。シスコは息子がフェレンギの価値観に染まることを懸念していたが、ジェイクとノーグの関係を見守ることで、異文化理解の重要性に気づき始める。ジェイクはノーグと共に勉強をし、互いに異なる背景や価値観を受け入れ合うようになる。
物語の終盤、クワークはネーガスがまだ生きており、彼が全てを試すための計画であったことを知る。ネーガスはフェレンギのリーダーシップにおける知恵と慎重さをクワークに学ばせるための策略として、彼を次期ネーガスに任命していた。クワークは安堵する一方で、自らが権力と危険の狭間に立つ覚悟を再確認する。このエピソードは、フェレンギ社会の権力争いと家族の絆、そして異文化間の理解の大切さを描き、DS9のクルーたちがそれぞれに成長する様子を強調している。
11. 「生命の遊び」 (“Vortex”)
物語は、カーデシア領域から来た異星人クロデンが、殺人事件の容疑者としてオドーに逮捕される場面から始まる。クロデンは捕らえられた際に「お前と同じ変身能力を持つ仲間がガンマ宇宙域にいる」とオドーに告げ、彼の関心を引く。変身種族に関する情報がほとんどないオドーにとって、これは自身の存在やルーツを探る希望となり、彼はクロデンの話が真実かどうかを確かめようとする。
クロデンは自由を条件にさらなる詳細を語ることを申し出、オドーと共に「ヴォーテックス」と呼ばれる危険な星域へ向かう。ヴォーテックスは「渦巻き」を意味し、オドーは真実と虚構が渦巻く状況に引き込まれることとなる。クロデンは道中、自身の故郷での迫害や、家族を守るために戦ってきた過去を語り、オドーに共感を呼びかける。孤独を抱えるオドーは、クロデンの言葉に心を動かされつつも、彼が本当に変身種族に関する情報を持っているのか疑いを持ち続ける。
クロデンが語る「変身種族の村」が実在するかは不明であり、オドーはクロデンの話をどこまで信じるべきかで葛藤する。クロデンは、オドーが仲間を求める気持ちに付け込んでいるようにも見え、オドーにとっては命を懸けた一種の「生命遊び」となっている。この危険な駆け引きを通じ、オドーは自身のアイデンティティと孤独と向き合う。
最終的に、オドーはクロデンの信頼性を試すため、彼を一時的に解放し、ヴォーテックス内での行動を見守る。クロデンはオドーを裏切ることなく、彼の信頼に応える行動を示し、異なる文化の中でも共感が成立する可能性を示唆する。オドーはクロデンと別れを告げ、自分の仲間や変身種族についてさらなる探求を続ける決意を固める。
このエピソードは、未知の領域「ヴォーテックス」がオドーの心の葛藤を象徴し、クロデンとの「生命を賭けた駆け引き」を通じて彼が自らのルーツと存在意義に向き合い、成長していく姿を描いている。
12. 「戦場の中で」 (“Battle Lines”)
物語は、ベイジョーの宗教指導者カイ・オパカがディープスペースナイン(DS9)を訪れるところから始まる。シスコはオパカにステーション内を案内し、彼女の平和と知恵に満ちた姿勢に敬意を表するが、オパカはシスコに「もっと大きな使命が待っている」と告げる。シスコ、キラ、ジュリアンはオパカを伴ってガンマ宇宙域の視察に向かうが、途中で意外な遭難信号を受け、救助のために向かう。
到着した惑星で予期せぬ攻撃を受け、彼らの船は墜落する。オパカはこの事故で致命傷を負い、一度は命を落とすが、惑星の「再生ナノマシン」により蘇生する。この惑星は特殊なナノ技術によって死者が再生する仕組みがあり、そのため惑星上では永遠に終わることのない戦闘が繰り返されていた。惑星に住むエノイスとノランという二つの敵対勢力は、再生によって不死となり、果てしない戦いの「宿命」に囚われている。
シスコとキラは、彼らが平和を取り戻す方法を模索し、オパカもまた二つの部族の和解に尽力しようとする。オパカは、「I was brought here for a reason.」(「ここに導かれたのは理由があるから」)と語り、この地での使命を受け入れる覚悟を見せる。彼女はシスコとキラに対し、この惑星に留まり、二つの部族の仲裁役として尽力する意志を示し、永遠の戦いに終止符を打つ可能性を信じる。
シスコはオパカを説得しようとするが、彼女は「これが私の運命」と述べ、穏やかに宿命を受け入れる。最終的に、シスコたちは惑星を離れるが、オパカは二つの戦士集団のために自らを捧げる決意を固め、残ることを選ぶ。原題「Battle Lines」は、この永遠の戦いの「境界線」と、オパカが二つの勢力間の橋渡し役として新たな戦いに挑む運命を象徴している。一方、日本語タイトル「戦士の宿命」は、オパカが宿命的な役割を担うこと、そして戦士たちが果てしない戦いに囚われた宿命を強調している。
このエピソードは、オパカが二つの戦士集団の争いに自らを捧げることで、彼女が担う宗教的使命と平和への覚悟が試される内容である。
13. 「語り部」 (“The Storyteller”)
物語は、シスコとオブライエンが対立するベイジョーの村の仲裁役として派遣されるところから始まる。二つの部族の和平を目指し、彼らは和解に向けて協力を約束するが、到着した村でオブライエンは予期せぬ役割を与えられる。村を脅かす「ダルロック」という神秘的な怪物が定期的に襲来し、村の「語り部」が儀式を通じてダルロックから村を守っていた。しかし現在の語り部は衰弱しており、死の間際にオブライエンを次の語り部として指名する。
オブライエンは戸惑いながらも村を救う責任を負い、儀式を試みるが、うまくいくかどうか不安を感じている。彼はシスコに「I’m not a storyteller, I’m an engineer.」(「私は語り部ではなく、技術者だ」)と打ち明け、失敗を恐れる心情を吐露する。シスコは励ましつつも、オブライエンが村人の信頼を得るためには自信を持って役目を果たす必要があると伝える。ダルロックが現れる中、オブライエンは村人たちをまとめ、彼らの心を一つにすることで儀式を成功に導く。
一方、DS9ではジュリアンが若きベイジョーのリーダー、ヴァリスと出会い、彼女の成長を支援する。ヴァリスは若くして村を治める立場に立たされ、責任の重さに苦しんでいた。ジュリアンは「Leadership is not about strength, but about wisdom.」(「リーダーシップとは強さではなく、知恵によるものだ」)と助言し、彼女が村人への理解を深められるように手助けする。ヴァリスはジュリアンの言葉に励まされ、仲間と協力して問題解決に取り組む決意を固める。
最終的にオブライエンはダルロックを退け、語り部の役割を村人に返し、村に必要なのは外部の助けではなく内なる団結であると気づく。原題「The Storyteller」は、村を救うために語り部の役割を引き受けたオブライエンの試練を象徴しており、日本語タイトル「語り部」も同様に、村を守るための使命と信頼を描いている。
14. 「頑固者」 (“Progress”)
物語は、ベイジョーの一部地域でエネルギー開発プロジェクトが進行し、その地域の住民が強制移住を迫られる場面から始まります。シスコの指示でキラはこの地域に向かい、立ち退きを拒否する老農夫ムラバクと対面します。ムラバクは、長年生活を共にしてきたこの土地が自分の一部であり、家族の記憶が詰まった場所だと主張し、決して離れようとはしません。「A home is more than wood and stone; it’s a part of you.」(「家とは木や石以上のものだ。それはお前自身の一部でもある」)と語るムラバクに、キラは次第に共感を覚えます。
当初キラは任務を遂行しようと強硬な態度を取りますが、ムラバクの生き方と信念に触発され、自身の価値観が揺らぎ始めます。彼の頑なな態度に対しキラは説得を試みるも、ムラバクは一切応じず、自らの土地を守り通す意志を見せます。キラは任務と個人的な感情との板挟みに陥り、苦悩するようになります。
最終的にキラは、プロジェクトを完了させるため、ムラバクに立ち退きを強制するしかないという決断に至ります。彼女は彼の家を焼き払い、物理的に留まれない状況を作り出します。この行為に対し、ムラバクは冷ややかに「You’ll have to live with what you’ve done.」(「お前は自分のしたことと共に生きていかなければならない」)と言い放ちます。その言葉はキラの心に重く響き、彼女は自身の選択がもたらす結果を背負うことになります。
このエピソードでは、キラの成長と、彼女が任務と個人的な信念の狭間で苦悩する様子が描かれています。彼女の決断がベイジョー人としての誇りや価値観にどのような影響を与えるのかが明らかとなり、指導者としての責任感と人間性が浮き彫りになる回です。タイトル「頑固者」はムラバクの意志の強さを象徴する一方で、職務に忠実であろうとするキラ自身の「頑固さ」も反映しています。
15. 「実体化する幻想」 (“If Wishes Were Horses”)
物語は、DS9のクルーがそれぞれの個人的な空想や願望について語り合う場面から始まります。やがて不思議な現象が起こり、彼らの空想が現実の形で具現化し始めます。最初に起こったのは、シスコの息子ジェイクが空想していたベースボール選手のバック・ボカイが実体となって現れるという出来事でした。さらに、ジュリアンが密かに恋心を抱くジャッジア・ダックスのもう一人の姿も現れ、ジュリアンを戸惑わせます。
一方、クワークの夢見た利益を求めるフェレンギ人の文化も具現化し、ステーション内は混乱に陥ります。この現象に不安を覚えたシスコは、空想の具現化が単なる偶発的な現象ではなく、何者かの意思によるものではないかと疑い始めます。調査を進める中で、オドーとキラも自身の潜在的な空想に出会い、その内容に戸惑います。
やがて、クルーの空想が具現化することで危険が増大し、ステーションが崩壊の危機に瀕するようになります。シスコたちは、これらの現象が全て実際の脅威であるのか、それとも空想の産物にすぎないのかを見極めるために協力し合います。シスコは「We must control our fears, or they will control us.」(「恐怖を制御しなければ、恐怖が我々を制御することになる」)と語り、クルーに冷静な対応を促します。
最終的に、空想を具現化する異星生命体がこの現象の原因であることが判明します。彼らは、人類が持つ「空想の力」を研究するため、クルーの思考や感情に干渉していたのでした。シスコは彼らに対し、DS9のクルーの空想や願望が制御不可能な結果を招くことを示し、異星生命体に実験の危険性を理解させます。異星生命体はその影響を受けて撤退し、DS9は平穏を取り戻します。
このエピソードでは、クルーが抱く内面的な願望や恐怖が浮き彫りにされ、人間性と向き合う過程が描かれています。また、シスコのリーダーシップと冷静さが際立つ一方、異星生命体との対話を通して、クルーの恐怖や希望がどのようにして現実に影響するかが問われる内容となっています。タイトル「実体化する幻想」は、クルーの空想が現実化するテーマを的確に表現しています。
16. 「見捨てられた者」 (“The Forsaken”)
物語は、惑星連邦からの大使団がDS9を訪れ、外交的な交流が行われる場面から始まります。シスコとクルーは大使団を歓迎しますが、クセのあるルクサナ・トロイ大使が到着し、クルーの間に緊張が走ります。彼女はオドーに特別な興味を示し、あけすけな態度で彼に接近するが、無口で冷静なオドーは戸惑いを隠せません。
その頃、DS9のシステムに未知のエイリアン・プログラムが侵入し、次々と故障を引き起こす事態が発生します。このプログラムはステーションのコンピュータに干渉し、セキュリティシステムや生活インフラが次々に機能不全に陥り、DS9内は混乱状態に陥ります。シスコはクルーに対し、冷静な対処を求める一方、問題の解決に向けた対策を練り始めます。
一方、ルクサナと共にエレベーター(ターボリフト)に閉じ込められたオドーは、彼女との交流を通じて自分の孤独な本心に向き合うことになります。ルクサナはオドーに「You hide behind that mask of yours, but I see the loneliness in you.」(「あなたはその仮面の裏に隠れているけど、私はあなたの孤独を見ている」)と語り、彼の心に触れようとします。オドーは最初は距離を置こうとするものの、ルクサナの理解と思いやりに次第に心を開き始め、彼女との会話が癒しのひとときとなります。
システム障害はシスコとクルーの迅速な対応で最終的に解消されますが、この事件を通じてオドーはルクサナに対して信頼を抱き、彼女の前でありのままの自分を見せる勇気を得ます。また、ルクサナもオドーに対し、他者との繋がりや理解がもたらす安らぎを教えることで、彼の孤独を少しでも和らげます。
このエピソードでは、DS9の技術的な問題解決と共に、オドーが人間関係における感情の交流を学ぶ姿が描かれています。タイトル「見捨てられた者」は、オドーが感じる孤独と、彼が自身の内面に向き合う過程に重ねられているといえます。
17. 「恐怖の演者たち」 (“Dramatis Personae”)
物語は、DS9に帰還したクリンゴン船の乗組員が急死し、その行動記録がクルーに大きな影響を与えるところから始まります。死の直前、クリンゴン船員が残した記録には、謎のエネルギーが乗組員同士の激しい対立を引き起こした様子が収められていました。クルーはこのエネルギー体に感染し、DS9内で異様な緊張が高まります。シスコ、キラ、オドーらも次第に疑心暗鬼に陥り、互いに不信感を募らせるようになります。
やがて、シスコとキラは互いにリーダーシップを巡って対立するようになり、キラは「シスコは任務に忠実でなく、ステーションに害を及ぼす危険がある」と考えるようになります。彼女はクルーを説得し、シスコに反抗する計画を進め始めます。シスコは冷静を装いながらも、次第に暴力的な行動に傾き、「The station is mine, and I will decide its fate.」(「このステーションは私のものだ。運命は私が決める」)と宣言します。この言葉から、シスコが徐々に通常の冷静さを失い、支配欲に駆られていることが示唆されます。
オドーはクルーの異常な行動を察知し、誰が影響を受け、誰がまだ冷静さを保っているかを見極め、ステーションの安全を確保しようとします。オドーの探知の結果、エネルギー体がクルーの感情や思考を操作していることが判明します。オドーはシスコとキラの両者に対し、内戦を避けるための説得を試みるも、感染の影響で冷静さを失ったクルーは容易に彼の言葉に耳を貸しません。
最終的に、オドーは緊急措置としてステーション内のエネルギーシステムをリセットし、異常を引き起こしていたエネルギー体を排除することに成功します。クルーは通常の思考に戻り、これまでの出来事がエネルギー体の影響だったと理解します。事件が収束した後、クルーたちは互いに無言の謝意を示し、再び結束を取り戻します。
このエピソードでは、DS9のクルーが対立や疑念により崩壊寸前に陥る様子が描かれ、オドーの冷静さとリーダーシップが際立つ内容となっています。タイトル「恐怖の演者たち」は、クルーがまるで「演者」のように対立に巻き込まれる様子と、その恐怖の感情を表しています。
18. 「デュエット」 (“Duet”)
物語は、DS9に病を抱えたカーデシア人が到着し、キラが彼を捕らえるところから始まります。彼の病気は、かつてカーデシア占領下のベイジョーで残虐行為が行われたガリテップ強制収容所でのみ感染するものであるため、キラは彼が戦犯であると疑います。彼の名はアミン・マルッツ。キラは彼が、かつて収容所で無数のベイジョー人を虐殺したとされる強制収容所司令官ガル・ダーヒールであると確信し、彼を裁こうとする決意を固めます。
尋問を通じて、マルッツは当初、自らがダーヒールであると認めるような発言をします。キラは彼の罪を追及し続けますが、彼の態度や物腰に違和感を覚え始めます。キラは「What you did to my people… it will not be forgotten.」(「あなたが私たちの民にしたことは…決して忘れられない」)と強く非難しますが、マルッツはそれを受け入れるような表情を見せ、キラは次第に彼が本当にダーヒールなのか疑問を抱きます。
やがて、オドーが収容所の記録を徹底的に調査した結果、ダーヒールはすでに亡くなっていることが確認されます。この情報が決定打となり、マルッツの正体がダーヒールでないことが明らかになります。彼の正体は、ガリテップ収容所で働いていたただの文書管理者であり、実際には直接の加害者ではなかったのです。マルッツは、自らが目撃した残虐行為に深く心を痛め、カーデシアの非道さに対する罪悪感から、ダーヒールの役を演じて罪を背負う覚悟を決めていました。
マルッツは、「I wanted to be punished… someone had to pay for what happened.」(「罰せられたかった…誰かがあの出来事の代償を払うべきだった」)と語り、カーデシアの過去を伝え、償いを果たしたいと告白します。キラは彼の決意を理解し、「I wanted him to be guilty, but he is just a man.」(「私は彼が有罪であることを望んでいた、でも彼はただの人間だ」)と心情を吐露し、彼に対する敵意が少しずつ和らぎます。
物語は、復讐心に燃えるベイジョー人が「ダーヒール」への報復を図り、マルッツを殺害して幕を閉じます。キラは彼の最後の選択と犠牲に思いを馳せ、復讐と赦しの狭間で揺れる自らの心と向き合います。
このエピソードでは、キラの内面の葛藤と、憎しみや償いの意味が深く掘り下げられています。タイトル「デュエット」は、キラとマルッツの二人が織り成す対話と、過去の真実を探り出すための「二重奏」を象徴しています。
19. 「預言者の手」 (“In the Hands of the Prophets”)
物語は、地球人の教師ケイコ・オブライエンがDS9で科学を教える授業中、ベイジョーの宗教と科学の教えが対立する場面から始まります。ケイコがワームホールについて科学的に説明する一方、ベイジョーの宗教指導者ヴェディク・ウィンはそれを「預言者の住まう聖地」として教えるべきだと抗議します。ウィンはベイジョー人の信仰を尊重するよう求め、ケイコの教育方法に対する不満を公然と示し、DS9のクルーとベイジョー人の間に緊張が走ります。
ウィンは次第に支持を集め、ケイコは「Science is not meant to replace faith, but we should not let faith silence science.」(「科学は信仰に取って代わるものではないが、信仰が科学を黙らせてはならない」)と主張するも、ウィンの宗教的圧力は増すばかりです。キラもまた、この問題に悩みながらも、ベイジョー人としてウィンの立場を理解しようとしますが、シスコはベイジョーの宗教とステーションの中立性を守ろうとします。これにより、シスコとウィンの間には微妙な対立が生じます。
やがて、オドーがベイジョー人の技術者が不審な状況で死亡する事件を調査し、ウィンの動機と事件との関連を疑い始めます。調査を進めた結果、ウィンはDS9を宗教的に支配するための計画を進めており、教育に対する介入を通じてベイジョー人の支持を得ようとしていたことが明らかになります。シスコは、「We cannot allow faith to control our lives, but we must respect those who believe.」(「我々は信仰が生活を支配するのを許してはならないが、信じる者を尊重することも必要だ」)と語り、宗教と科学のバランスの重要性を説きます。
シスコの説得により、ウィンの陰謀は失敗に終わり、ベイジョー人とDS9のクルーは宗教と科学が共存する道を模索し始めます。事件が解決した後、シスコは宗教と科学の共存がDS9においていかに重要であるかを再確認し、ステーション内の緊張を和らげます。
このエピソードは、宗教と科学の対立を通じて、DS9の多文化社会の複雑さを浮き彫りにしています。タイトル「預言者の手」は、ベイジョー人の信仰と預言者の影響力が、登場人物たちの運命に関与する様子を示唆しています。
以上が、シーズン1の各エピソードの簡単なあらすじです。
各シーズンの放送期間とエピソード数は下記に示した通りです。各シーズンの赤い部分をクリックすると、そのシーズン全話のアラスジが読めます。