下部消化管内視鏡検査の初心者には、鉗子孔からの送水にはガスコン水ではなく真水(ガスコンを混ぜていないという意味で)を使用する事をお奨めする。
多くの施設では、粘液除去目的でガスコン水を用いているが、施設によってはガスコンの濃度が高くて白濁しており、透明度が低い。この低い透明度のガスコン腔の進行方向を見定めるには邪魔になるだけである。
具体的にいうと、濃度が高くて透明度の低いガスコン水を注入すると、視野に濃霧がかかったようになって、次の管腔の進行方向が確認できない。これでは、初心者にとって深部挿入はより困難になるばかりである。
要するに、Poor Preparationの状態で検査をしているのと同じくらい視界が確保できない状況だ。Ptに下剤と多くの水を飲んでもらって大腸を洗浄した意味を考えると、濃度の濃いガスコン水を使用することは本末転倒とさえ言える。
ところで、内視鏡初心者の皆さんが、内視鏡室でベテランの看護師にいきなり真水の用意をお願いしても聞き届けてくれないかもしれない。
『理屈コネ太郎』も真水を使いたいと申し出たところ、「え~、真水はないんじゃなぁ~い?」と根拠なく言われて真剣に受け止めて貰えなかった。
だから、初心者である皆さんが看護師にお願いするときは、あくまで丁寧に礼儀をわきまえてお願いしよう。あるいは、ごくごく薄いガスコン水にしてもらおう。
絶対に医師の自分がそう指示しているのだから、あなた達は言う事を聞けばよい、みたいな態度は控えること。
薄いガスコン水で妥結できた場合の薄さの目安は、ガスコン水をシリンジに詰めたとき、シリンジに書いてある数字が反対側に透けて用意に読み取れる薄さ。薄ければ薄いほど宜しい。もし、白濁で反対側の数字が空けて見えなかったら。間違いなくそのガスコン水は視野を濃霧状にして挿入を困難化している。
ところで、真水を使うデメリットはあるのだろうか。答えは”ある”だ。
回盲弁に近い領域の右側結腸は、バウヒン弁から出てくる細かい泡上の小腸液が半月ヒダや腸管膨隆部に貯留して粘膜を覆い隠している。この泡状の腸液は真水では除去困難で、ガスコン水でなくては洗浄できない。
これまでの話しを纏めると、次の事がいえると思う。まず、肛門近辺では管腔の進行方向を見極めるには真水が良いが、だいたい横行結腸以深なると泡状の腸液が邪魔になるので、そういう時にはガスコン水が有効である。
よかったら試してみて。
今回は以上。
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