“口論で負けたら死ぬ病”や“謝ったら死ぬ病”の上司・先輩──そして認知バイアスと転職の判断軸

職場には、自分の非を内心では理解していながら、決して口論に負けまいと屁理屈を並べる人がいる。あるいは、自分のミスを分かっていながらも、何があっても謝らない人もいる。

『理屈コネ太郎』は、こういう人たちをそれぞれ「口論で負けたら死ぬ病」「謝ったら死ぬ病」に罹っていると定義している。もちろん、医学的疾患ではないが、職場においては十分に“社会的な病”として成立する。

そして、こうした言動には「認知バイアス」が色濃く影を落としている。今回はこの観点も交えて掘り下げてみたい。


Contents

「確証バイアス」が支える屁理屈

口論で負けたら死ぬ病の人たちは、自分に都合の良い情報だけを集め、それが正しいと信じ込む。これは典型的な確証バイアスである。

しかも彼らは、自分の非を突かれそうになると、大声で早口になり、威圧的な態度で場を制圧しようとする。これは論理的正しさよりも「相手を黙らせること」を目的にしているからだ。

その背後には、「自分が間違っていたら自分の価値が損なわれる」という自己肯定バイアスが潜んでいる。


「正常性バイアス」と「責任転嫁バイアス」が支える謝罪拒否

謝ったら死ぬ病の人たちは、自分が悪いと分かっていても、「それほど重大なことではない」と内心で軽視する。これは正常性バイアスである。

そして、責任の所在を曖昧にしたまま、「あれは◯◯が指示した」「情報がなかった」と他人に転嫁する。これは責任転嫁バイアスの一例である。

問題なのは、これらのバイアスが自己防衛のために習慣化され、本人にまったく自覚がないという点である。こうした人物が上司や先輩であると、部下や後輩は深く傷つき、成長機会すら奪われる。


「地位バイアス」による無自覚の放置

これらの“病”に罹っている人たちは、周囲からも注意されない。なぜなら、多くの場合、年齢や役職という地位バイアスが働き、「あの人は偉いから…」「長年やってきたから…」と無条件にその言動が正当化されがちだからだ。

こうして誰も注意せず、指導もしない。本人も変わらない。進歩しない。まさに職業人として失格である。


「可哀そうバイアス」による判断の歪み

これらの人々は、ある意味で“誰にも相手にされない哀れな存在”でもある。そのため周囲が「ちょっと可哀そう」と感じてしまい、真の問題性から目を逸らすことがある。これも一種の情動バイアスであり、可哀そうバイアスと言い換えてもいい。

だが、どれほど可哀そうであっても、無関係な他人を傷つけてよい理由にはならない。


指導も解雇も難しい時代

ハラスメントが過敏に取り上げられる現代では、問題のある社員に対して上司や管理者が指導すること自体が難しくなってきている。解雇も一筋縄ではいかない。

だからこそ、問題ある人物は増長する。そして、ますます周囲のモチベーションは下がり、優秀な人材が離れていく。


対策の一つとしての「客観的評価」

職場に産業心理学・調査法・確率統計学の知識を持つ産業医がいれば、ランダム抽出型アンケート+加重統計処理という手段で、問題人物の評価を客観化することが可能だ。

この評価をもとに、直接フィードバックすることで改善の余地があるかもしれない。逆に言えば、こうした客観的なプロセスなしには、感情論だけで人を動かすことは難しい。


「スキル実績バイアス」を活用した交渉戦略

問題人物の下についた場合、戦わずに済ませたいのが本音だが、どうしても改善しないなら自分の実績を“交渉カード”に変えるという戦術もある。

「実力のある私と、問題ばかり起こす彼と、どちらが組織にとって必要ですか?」と、業績をもとに冷静に訴えるのだ。

それでも、「まあまあまあ、仲良くやれや」と流すような上層部が出てくるなら、その組織はかなりの“腐食”が進んでいる。地位バイアスが制度より優先される組織は危ない。


まとめ:認知バイアスに支配された組織を見極める

“口論で負けたら死ぬ病”や“謝ったら死ぬ病”に罹った人々の背後には、複数の認知バイアスが複雑に絡んでいる。

そしてその認知の歪みは、当人だけでなく、組織全体の判断を狂わせる。認知バイアスに支配された組織で、まともな社会人人生を築くことは難しい。

実績を武器に戦うのも一手だが、上層部が機能していないと判断したら、密かに転職先を探すことを真剣に検討すべきである。

人生は短い。
バカな上司のバイアスの中で、消耗している暇はない。


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