トンデモクリニック勤務体験その(1)

私『理屈コネ太郎』は、医師として色々な医療機関に勤務してきた。訪問診療専門型のクリニック以外、大学病院、市中大型病院、個人クリニックと大体の形態は経験してきたと思う。

その中には人間として医師として成長させてくれた職場もあるが、驚くほど宜しくない医療機関もあった。今回はこうした、宜しくない医療機関での経験談。

まず最初に明らかにしておくと、今回紹介する医療機関が宜しくない理由は、①不要な検査をする、②患者を不必要に囲い込むの2点である。これらを念頭において以下の文を読み進めて戴きたい。

そのクリニックは、郊外のショッピングモール内にある。場所や診療科目はここでは秘すが、とにかくそのクリニックは院長先生とその取り巻き(医師でもない、看護師でもない、医療事務職でもない)が、良くわからない院内ルール(もちろん明文化などはされていない)に則って職員を叱責している場面によく遭遇した。

驚くのは、明らかに、そのクリニックでは能力的にも設備的にも診療科目的にも診療できない種類の疾病の患者が受診したときに、そのクリニックはとにかく不要な検査をその患者に受けさせるのだ。医師の私から見て、この患者に何故この検査が有用なのか…と不思議に思うような医学的不合理な検査を受けさせる。これら不要な検査を一通り受けさせなければ、簡単な薬の処方もしないのだ。そういう院内ルールなのだ。

患者は何時間も待合室でまたされたあと、診察室によばれ、そこで院内ルールを告げられる。告げられるのは、一通り検査しないといかなる薬の処方も出来ないという事だけで、その患者の病気を専門的に診療できる医師がいない事は告げられないのである。これは驚きだった。

そして、更に驚くのは、一通り不要な検査を終わっても患者を然るべき専門医療機関へ紹介することもしないのだ。そのクリニックで誰一人その患者の病気をきちんと診ることができないのに。その患者を取り込んだままにして通院させるのである。

私はこのクリニックの院長から直接「せっかく集めた患者さんなんで他の医療機関には紹介しないでください」と言われた。噂には聞いていたが、こんな考え方をする医師が本当にいるのだと驚いた。

そんな状態だから、このクリニックは医師が入職してもすぐに退職する。つねに医師募集の広告を専門業者に依頼して医師募集をかけている。

そして、いつも何人かの患者が待合室で怒って大声をあげている。まあ、患者が待合室で激怒して大声あげているのはどこの医療機関でも見られる光景だが、ここのはちょっと違う。

このクリニックでは、明らかなクリニック側のミスや説明不足、患者との合意形成不全により患者が怒るケースが圧倒的に多いのだ。

何故そんな事が起きるかというと、それは院長&取り巻きが院内ルールの変更を頻繁に行っていて、その変更が職員たち(パートも含めると40人くらいいたかなあ?)に行き届かないのだ。

行き届かないのは、ルールを変更した張本人達が、その情報を隅々まで行き渡らせる努力を完全に放棄しているから、と職員たちが愚痴ってた。

まあ、とにかくここには書けない事も含めてひどいクリニックだった。そこはある検査技術で日本一を謳っているので、勉強のつもりでパートで働き始めたが、すぐに退職させていただいた。

もしかしたら本当にその検査技術で日本一なのかも知れないが、それはその医療機関の患者への向き合い方をみれば、もはやどうでも無意味な事に思えた。

こういう経験をして思うのは、私がもし医師ではなく、普通の患者の立場でこういう医療機関を受診したとしたらどう考えるか、である。間違いなく、この医療機関を信じないだろう。金目当てで不要な検査を押し付けていると感じとるだろう。

何故なら、実際にその通りなのだから。

一度でもこういう医療機関を経験すると、患者はその経験から医療全体に警戒心を抱くようになるかもしれない。次に受診する医療機関が仮にまともなところでも、すべてに猜疑心を抱くかも知れない。

こうして医療不信が毎日増えているのだなァ~と思うと、何とも言えない、嫌ァな感情が湧いてきたのを覚えている。

今回は以上。

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