中高年の大食いは健康に悪い

旺盛な食欲は健康の証との言説があるが、その食欲が本物であるのならこれは正しい。しかし、お腹いっぱい食べるのはお奨めできない。

身体が成長する時期、仕事などでエネルギーを消費する時期、それは多分40代前半くらいまでだと思うが、この頃までは旺盛な食欲に従ってお腹一杯食べても良いだろう。勿論、糖尿病は脂質異常症などで食事療法中の人は別の話である。

しかし、40代も半ばを過ぎると、足腰の筋肉が若いころとは明らかな違うように、胃や腸の動きも明らかな違ってくる。それはなぜかというと、胃や腸も筋肉を構成する筋肉が老化するから。

消化管は筋肉の美しく調律された運動によって食塊を肛門方向へと運搬する。この筋肉が衰えたら肛門到達まで、即ち排便まで、に時間がかかるようになる。だから中高年の食事は渋滞している道の交通量を増やすようなことにならないように注意しなくてはならない。

狭い小腸から大腸に出た食物(この時点では”便”)を、上行結腸は重力に逆らって肛門方向へ移動させる。横行結腸の後半、S状結腸の前半でも重力に逆らって移動させる。これは相当なエネルギーを消費する結構な運動だ。中高年が腹一杯食べるのは100メートルダッシュするくらい無茶な行為だ。

四十代前半くらいまでは、旺盛な食欲に見合う消化管機能があるのだ。しかし、消化管機能の衰えはなかなか自覚されない。

人間は歴史的に空腹の時代が長かったためか、食べられるときに食べるという行動が生存戦略としてプログラムされているのかもしれない。しかしこのプログラムが有効なのは次の食事がいつになるかわからないような時代だ。

現代の日本では、毎日三食を食べることに全く困難はない。それどころか、フードロスが社会問題化するくらいだ。日本は食物に溢れ返っているのである。

そうした現代社会で、消化管機能が若い程ではない中高年が、毎回の食事ごとにお腹いっぱい食事していたら、それはいつか消化器が「もおいい加減にしておくれ~」と悲鳴を上げるはずだ。場合によっては反乱を起こして、嘔吐と下痢という苦痛をもって人間に消化管の苦労を知らしめようとするだろう。

場合によっては消化管はストライキを決起して蠕動を休んでお腹をパンパンに膨らますかもしれない。

50代以上の人で、特に運動をしない人は、出来るだけ腹七分目を心がけると良いと思う。消化管にも負担が軽くなるし、体重が減少すれば膝や腰にも負担が少なくなる。良い事ずくめである。

ただ、自分の年齢・身長・体重・活動量より、なんとなく適切な食事量を推定するのはなかなか困難だ。そのためにはまずは自分にあった食事内容とその量について書籍などで勉強すると良いだろう。

特にこの分野では、導尿病などの病気を持つ人には管理栄養士と呼ばれる専門家集団が、特に病気のない人には栄養士と呼ばれる専門家集団が日本には存在する。

この人たちの書いた書籍は沢山あるので食わず嫌いせずにきちんと読んでみて欲しい、流行の〇〇〇ダイエット法なとという本とは段違いな、永きにわたって健康に資する知識が得られると思う

今回は以上。

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