本ページでは、予約制の医療機関に予約なしで突然押しかけて「診てくれ」とゴネても、ほぼ目的は果たせない理由について、元医師の立場から解説する。
ちょうど今、私理屈コネ太郎は都内有数のブランド病院の眼科に通院しているが、毎回のように待合室で「予約なしで診てくれ」と受付と押し問答する人に出くわす。今回は、その現場で繰り返される典型的なやりとりを紹介しつつ、予約診療の本当の仕組みを説明する。
Contents
よくある押し問答
受診希望者「目の調子が悪いんですけど、診てもらえませんか?」
受付スタッフ「予約はありますか?」
受診希望者「予約していません。今朝急に調子が悪くなったので」
受付スタッフ「予約なら最短で明日の午後になります」
受診希望者「そんなに待てません。先生に話してきてもらえませんか?」
受付スタッフ「まずは救急外来を受診してください。救急医が緊急と判断すれば、できるだけ早く眼科医が診察します」
このやりとり、ほぼ毎回のように繰り返される。
だが、完全予約制の外来で「予約なしだけど、ちょっと診てよ」というのは、まず通らない。受付スタッフは予約なし患者をねじ込む権限など持っていない。
ましてや、待合室にはすでに20人以上の予約患者が順番を待っている。全員が事前予約を済ませ、ルールに沿って来院しているのだ。
予約診療は面倒だけど合理的
この病院では、初診時には紹介状(診療情報提供書)が必須で、その後も定期通院は予約制。予約変更にも病院が定めた手続きが必要だ。
確かに患者視点からは不便で手間はかかる。だが、予約制は医療の質と公平性を保つための仕組みだ。
私自身、視力は仕事にも生活にも不可欠だから、多少面倒でも予約を守って受診している。
ブランド病院神話の誤解
ここで少し話はそれるが、私がこの病院を選んだのは近所の眼科に紹介されたからであって、ブランド信仰があったわけではない。
そもそも、健康保険診療なら無名病院もブランド病院も同じ医療費。
診療内容が同じなら支払額も全国一律で、ブランド病院だから医療費が高いわけではない。
逆に、ブランド病院だからといって診療水準が特別高いわけでもない。今や多くの病気には診療ガイドラインが存在し、医師間の知識格差は小さい。
それでも、「ブランド病院なら特別な医療が受けられる」「お金を積めば特別扱いしてもらえる」と勘違いする人が後を絶たない。
特に地方から来る患者ほどその傾向が強いが、保険診療では、金を積んでも特別扱いは受けられない。これが日本の医療の大原則だ。
心付けも意味なし
今でも医師に心付けを渡そうとする患者がいるが、これも無意味。
「心付けをもらったから薬を多く出す」とか「不要な検査をサービスする」とか、そんな医療はあり得ない。
医療内容は医学的判断に基づくもので、金品で変わるものではない。
日本の医療は全国標準化されている
さらに言えば、日本の医療水準は全国でほぼ均一。
すべての都道府県に医学部があり、そこから毎年100人規模で新米医師が生まれる。
大学病院を中心に、公立病院や地域中核病院が配置され、ガイドラインに基づく標準的医療が全国で受けられる仕組みだ。
一部の専門医は都市部に集中しているが、「予約診療で必要な標準医療」は地方でも問題なく受けられる。
「都会の病院でなきゃダメ」などというのは、もはや時代遅れの迷信だ。
予約なしで診てもらえないのは当然の仕組み
病院が予約制を敷くのは、単に効率のためだけではない。
予約診療は「医学的緊急度」とは無関係に、公平な順番を確保する仕組みなのだ。
ここに「患者自身の緊急感」は持ち込めない。
「すぐ診てほしい」という気持ちはわかるが、そこに個別対応していたら声の大きな患者ばかりが得をする不公平医療になってしまう。
緊急なら救急外来へ
では「どうしても今すぐ診てほしい」場合はどうするか。
答えは救急外来だ。
救急外来の医師が、問診・診察・必要なら画像検査までして、医学的に今すぐ専門医の診察が必要かを判断する。
本当に緊急なら、予約患者を飛び越えてでも診てもらえる仕組みが、すでに用意されている。
まとめ
予約診療はルールを守る人が損をしないための仕組みだ。
予約なしでゴネて特別扱いを求めるのは、ルール無視の横入りに他ならない。
それを防ぎ、医療の公平性を保つための仕組みが予約診療なのだ。
「診てくれ」と押しかけても無駄な理由はここにある。
日本の医療は標準化され、平等なアクセスを守るために設計されたシステム(かなり制度疲労を起こしているが)だ。
自分の健康を守るためにも、ぜひ予約という仕組みを理解し、正しい受診を心がけてほしい。
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