今の医者ってそんなに金持ちではない。

世間では、医師が裕福だと考えられがちですが、実際の医師の収入はそれほど高くありません。本記事では、その理由について詳しく説明します。

医師が裕福だと思われているのは、昭和のある時期に実際に医療機関が高収益を上げて医師が裕福だった時代があったためです。その背景には、主に以下の3つの要因が関係していました。

Contents

1. 医療機関優遇税制(租税特別措置法第7条ノ10)
かつては、医療機関には非常に有利な税制が適用されていました。昭和時代には、租税特別措置法第7条ノ10があり、医療機関が保険診療によって得た報酬の72%を経費として自動的に控除できる仕組みが存在していました。これにより、実際に課税対象となるのは売上の28%のみであり、医療機関の利益は大きく増加しました。この税制のおかげで、当時の医療機関は大きな財産を築くことができました。

2. 国民皆保険制度の導入
昭和36年に整備された国民皆保険制度も、医療機関が裕福だった理由の一つです。この制度により、誰でも医療を受けることが可能となり、医療機関の利用者が急増しました。潜在患者が実際に受診し、医療機関に安定した収益をもたらすようになりました。特に、保険診療により得られた報酬の多くが控除される優遇税制と相まって、医療機関は極めて高い利益を得ることができたのです。

3. 薬価差益の存在
当時は、薬を仕入れる価格(卸価格)と、患者に提供する際の価格(薬価)の間に大きな差益がありました。この「薬価差益」が、医療機関にとっては大きな利益源となっていました。この制度は、医療機関が薬を安く仕入れて、定められた薬価で患者に提供することで、その差額が利益として残るというものでした。薬価は国によって決定されており、全ての医療機関で同じ価格が適用されるため、この差益は当時の医療機関にとって非常に有利なものでした。

しかし、これらの恩恵は現在ではほぼ失われています。

現在の状況
まず、かつての「医療機関優遇税制」は、現在ではほとんど廃止され、租税特別措置法第26条という形で限定的に残っているに過ぎません。第26条では、過疎地やスタートアップの小規模クリニックなど、特定の条件を満たす医療機関のみが対象となっています。つまり、売上の少ない医療機関に限られており、かつてのような大規模な優遇税制とは程遠いものです。このため、現在の医療機関はかつてのように高い収益を得ることが難しくなっています。

さらに、薬価差益も大幅に縮小されました。厚生労働省は、全国の薬の卸価格を調査し、薬価を定期的に調整しています。このため、現在では薬価差益がほとんど発生せず、かつてのような大きな利益を得ることはできません。

現代の医療機関の経済状況
昭和の時代とは異なり、現在の医療機関は以前ほど裕福ではありません。とはいえ、国民皆保険制度が存在しているため、しっかり運営すれば安定した収入を得ることは可能です。ただし、かつてのように「上の中」以上の裕福な状態ではなく、現在の医師の収入では「中の上」または「上の下」といった生活水準に留まるケースが多くなっています。医療機関として運営を続ける限り、困窮することは少ないものの、特に高額な設備投資や多くの人件費を抱えると、収入が足りないという状況も起こり得ます。

国の意図についての推測
ここで、国が医療機関を「裕福にも貧困にもさせないように」制度設計しているという仮説が浮かびます。医療機関が国民皆保険制度の枠内での保険診療に従事する限り、極端な困窮に陥ることはなく、ある程度の収入を得ることが可能です。逆に言えば、過去のような大きな利益を得ることができなくなっているのも事実です。国は、医療機関が過度に利益を追求するのではなく、保険診療の範囲内で安定的に医療を提供することを意図しているのではないでしょうか。

医療機関が過剰に裕福になることを防ぎつつ、困窮もさせないというバランスが、国の制度設計の一部であると考えられます。これにより、医療機関は保険制度の中で働き続け、国民の健康保険サービスを維持することが目的とされている可能性が高いです。

まとめ
かつてのような医療機関優遇税制や薬価差益はほぼ消滅しました。現在の医療機関は、かつてほど裕福ではありませんが、国民皆保険制度に守られた安定した収入を得ることが可能です。ただし、医療機関が金持ちだという固定観念はもはや過去のものであり、富裕層をターゲットにするビジネスなどでは、医療機関をターゲットにするのは避けた方が良いでしょう。

今回はここまでです。

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