高血圧は極めて有名な疾病である。一般の人でも、高血圧は何か恐ろしい事態を招来する忌々しい現象であると理解している。
これはおそらく、学校や職場での健康診断の普及による啓蒙のおかげであろう。
しかし、疾病としての高血圧の歴史は浅い。血圧計が開発されるまでは、血圧という概念はなかったし、ましてや我々の中には血圧の高い人がいて、その血圧が高いが故に、脳卒中や心臓病などのリスクがそうでない人に比べて増加するなどということは、誰も想像していなかった。
しかし臨床データと統計学が、高血圧が心血管イヴェントを増加させる因子であると分かってから、俄然高血圧の疾病としての研究は質量ともに増加していく。
本書はそうした高血圧研究の歴史を概観するのに良書である。