柔道一直線 テレビ版 全92話 アラスジ 勿論ネタバレあり。

「柔道一直線」は、ある年齢以上の日本人男性なら必ず知っているスポ根TVドラマです。1969年6月22日から1971年4月4日まで、TBS系列で毎週日曜日19:00に放送されました。全92話、1話30分の連続テレビドラマです。

ちなみに、「ウルトラマン」は1966年7月17日、「仮面ライダー」は1971年4月3日、「仮面の忍者 赤影」は1967年4月5日に放送開始されました。

このドラマで特に有名なシーンは、近藤正臣演じる高校生・結城信吾が、ピアノの鍵盤に飛び乗り、バレリーナのような足取りで「猫ふんじゃった」を演奏する場面です。この場面は珍シーン・名シーンとして何度も再放送され、多くの人の記憶に残っています。しかし、最終回までしっかり観た人はほとんどおらず、この作品を本気で考察した大人もほとんどいない…と理屈コネ太郎は考えています。

そこで本稿では、ドラマの時代背景や登場人物の心理、当時の制作陣がどのように多彩な表現手法を駆使して作品を作り上げたのか、その魅力を最終回まで皆さんとともに味わっていこうと思います。

物語の時代設定は、1964年の東京オリンピックの5年後。外国人との試合で亡くなった柔道家の父を追いかけて、主人公の中学生・一条直也が柔道に打ち込む姿を描いた、成長物語です。直也は高校一年生ながら、既に高校生柔道の日本王者となり、世界レベルの実力を持つに至ります。

東京オリンピックは、1964年10月10日から10月24日まで開催された第18回オリンピック競技大会で、日本が戦後復興の象徴として世界に再び立ち上がる姿を見せました。このドラマは、その戦後の雰囲気がまだ色濃く残る1969年の日本を舞台にしています。朝鮮戦争やオリンピックを経た日本が、右肩上がりの経済成長期に突入し、その中で青春を駆け抜けるスポーツドラマが『柔道一直線』です。

私、理屈コネ太郎は、桜木健一と吉沢京子が主演を務めたこのドラマを、約50年ぶりにAmazon Primeで視聴しています。今観て思うのは、役者たちの身体能力や表現力、芝居のスキルが素晴らしいこと。そして、物語の内容が非常に濃密だということです。

登場人物の台詞には人情味があり、含意はとても深く、人生の厳しさと素晴らしさを感じさせます。ナレーションやBGMも魅力的です。テレビが全盛期に差し掛かっていた当時、多くの役者、原作者、脚本家、音楽作家が舞台芸術や実験的手法に挑戦していました。彼らは古典的な舞台芸術に親しみつつ、新しい表現にも積極的に取り組んでいました。

ドラマで描かれる柔道は、当身や荒唐無稽な必殺技が登場し、試合中にその技の名前を叫んだり、無許可の試合が繰り広げられたりと、現実の柔道とはかけ離れていますが、それが作品の本質を損なうことはありません。

作品の中心には、柔道に青春を捧げる少年・一条直也がいます。彼を取り巻く若者たちもまた、真摯に自分と向き合い、時代の中で燃え続けています。この描写が、非常に素晴らしいのです。

作中、時に無意味に厳しい展開や拗れた男たちの心情が描かれますが、それもまた、かつての日本には人間の機微に満ちたドラマを作れる人々がいたことを再認識させてくれます。

さて、物語のあらすじに入る前に、主な登場人物を紹介しましょう。

一条直也:本作の主人公。演じるは桜木健一。母子家庭に育つ柔道少年。柔道家だった亡父の面影を追い、柔道に直向きに打ち込む。すぐに解答を教えてもらいたたがる甘ったれた精神の持ち主である。迷いの多さ、心の弱さを師である車周作に指摘されるが、一向に自覚する気配がない。師である車周作を敬愛しているが、車周作が理想とする勝負に生きる柔道家が持つべき厳しさや強さを理解できないでいる。

車周作:一条直也の柔道の師。演ずるは高松英郎。自身が考案した必殺技”地獄車”で人を殺め、講道館を追われ隠遁生活を送る柔道超人。弟子の直也と右京には柔道家として、1個の人間として自分の道を歩むように指導するが、昭和のオジサンの美徳である寡黙さゆえになかなか弟子たちに本心を理解してもらえない。その教え方は厳しく叱責するだけで、受容したり意図を原語的に指導したりがない。とはいえ、直也も右京も押しかけ弟子だから仕方がないともいえる。手製の掘っ建て小屋に住み、自給自足的な隠遁生活を送っている。住民票はどこに置いていたのか今の理屈コネ太郎には疑問。納税しているのかも不明。最終回、直也は自分とは違う柔の道を進むと理解し、そして直也が十分に成長したと考え、直也の前から姿を消し、おそらく再び孤独な隠遁生活に戻る。

嵐先生:直也が通う青葉中学柔道部顧問の先生。中学時代の直也のもう一人の師であると言っても良い。車周作が厳しく指導するのとは対照的に、嵐先生は教師らしく生徒である直也を受容し導こうとする。演ずるは牧冬吉。仮面の忍者赤影で白影を演じた人物といえばわかり易いだろうか。柔道の腕はからきしだが、生徒思いで恐妻家の好人物。常に直也の心情を察してくれる。

鶴田先生:直也が進学した桜ヶ丘高校柔道部顧問の先生。高校時代の直也のもう一人の師であると言っても良い。生徒を思いやる優しい先生で、柔道の腕前もそこそこらしい。演ずるは名古屋章。

鮫島三郎:巌流中学柔道部主将。演ずるはジョー鮫島。劇中登場する直也の初のライバル的存在であるが、ややヘタレの設定。中学から高校を通して登場する。

赤月旭:劇中最初に登場する直也のガチのライバル。演ずるは真山譲次。中学時代からの直也のライバルであり続ける。端正な外見と合理的思考の持ち主。敵の試合を録画して研究する進取の気風の持ち主。そしておぼっちゃん。

大豪寺虎男:剛よく柔を制す男。演ずるは保高正伸。劇中”わが剛道部は”と発言し、謎の体術である剛道を遣うのだが、何故か柔道の公式大会に参加してくる天道高校の生徒。直也より年長で豪放磊落だが女性には繊細な心をもつ人物。豪快で力任せだが、時に鋭い考察を述べたりする。

風祭右京:一条直也のライバルの一人。演ずるは佐々木剛。中学三年生の直也の前に突然あらわれた高校生のライバル。明和高校同級生達の中でただひとり他の生徒とは色の異なるの詰襟征服をビシッと着るオシャレな高校生。在野の柔道超人車周作を明和高校柔道部コーチに招聘し、必殺技”地獄車”を直伝される。右京もまた数々のライバルの出現に自身の生き方を揺さぶられる。最終回、パリの国際大会に出場するために直也と共に機上の人となる。

結城信吾:桜ヶ丘高校のスワンとも呼ばれる天才高校柔道家。直也が高校に進学してから登場する人物。演ずるは近藤正臣。一条直也の通う高校の三年。ピアノの鍵盤に乗り足で猫ふんじゃったを弾くシーンはあまりに有名。彼のストイックな生き方、ブレない信念は時に軋轢をうみ誤解を招くが、しかしそれでも彼の信念は揺るがない。ある意味で、既に完成された人格ともいえる。

城山大作:桜島高校柔道部の主将。車周作の旧友倉科の弟子。必殺技大噴火投げを遣い、高校生の直也の前に立ちはだかり続けた男。優れた人間観察眼を持ち、戦う男の大胆不敵さと他人を思い遣る優しさと礼節を併せ持つ薩摩隼人。最終回でパリの柔道大会に出場するために直也と共に機上の人となる。

みきっぺ:一条直也の中学高校の同級生。文学の素養のある、可愛い女の子。粗暴で甘ったれで短絡的思考の直也にアドバイスや救いを与える直也の良き理解者。

かあちゃん:柔道家であった直也の父が他界してのち、鮮魚店を営みながら直也を育てている。優しく、大きく、時に厳しく、時にユーモラスな、器の大きな女性である。

丸井源太郎:車周作の地獄車によって父の丸井六段が落命している。

当サイトでは、この長いテレビシリーズを、物語の構成と読みやすさの観点から中学生時代と高校生時代に大きく分けるて解説します。各時代で一話ずつレビューしています。

また、理屈コネ太郎独自の試みとして、車周作視点での柔道一直線や、母ちゃん視点での柔道一直線を記述してみました。さらに、足でピアノを弾く男結城慎吾を考察しました。ご興味あれば下記よりお愉しみ下さい。

中学生時代全話あらすじココをクリック
高校生時代全話あらすじココをクリック
車周作視点の柔道一直線』はココをクリック
かあちゃん視点の柔道一直線』はココをクリック
足でピアノを弾く男、結城慎吾を考察する』はココをクリック

今回は以上。

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