艇の推進方式別ブローチング耐性【考察という名の知ったかぶり】

本ページでは、小型船舶における3つの代表的な推進方式と、それぞれのブローチング耐性について考察する。ただし、対象はヨットを除く。

小型船舶の推進方式は、多くの場合「船外機艇」「船内機艇(以下シャフト船)」「船内外機艇(以下ドライブ艇)」の3種類である。(各方式の詳細やメリット・デメリットについてはリンクを参照)

ここで述べる内容は、筆者の個人的な見解に基づくものであるため、参考程度に読んでいただきたい。

Contents

ブローチング耐性とは?
ブローチング(broaching)は、小型船舶やヨットが荒れた海況や波を受ける際、とくに斜め後方から波を受けた場合に発生する危険な操船状態を指す。この現象は、主に船が波の斜面を下る際に生じ、以下の特徴がある。

  • 波の作用による操船不能
    波の力で船尾が押され、船が波に対して横向きになる。これにより不安定な状態に陥る。
  • 舵の効きが失われる
    波の強い押し流しにより進行方向を維持できず、舵が効かなくなる場合がある。これが操船不能状態を引き起こし、危険性を高める。
  • 横転や転覆のリスク
    船が波に横向きになると、波の側面からの力を受けやすくなり、横転や転覆のリスクが増す。

ここでは、特に「舵の効きが失われる」点に着目し、推進方式ごとのブローチング耐性を検討する。推進方式により舵を効かせる仕組みが異なるため、ブローチング中に舵が有効に機能する船を「ブローチング耐性が高い」と表現する。ただし、ブローチング耐性と転覆耐性は異なる概念であり、ブローチング耐性が低くても転覆しにくい船は存在する。このため、本記事は一つの意見として読んでいただきたい。

結論:シャフト船はブローチングに弱い?
筆者の考えでは、シャフト船はブローチングに対する耐性が最も低いと推察される。その理由は、ブローチング中に舵が効かなくなる現象がシャフト船で最も顕著であるからだ。

シャフト船は、後方からの波と船の速度が一致すると舵の周囲に水流が発生せず、舵が効かなくなる。このため、針路の維持や変更が困難となる。特に対地速度と波の速度が一致した場合、シャフト船では進路を制御しにくい。

一方、ドライブ艇や船外機艇はプロペラの向きを変えることで針路を変更できる。プロペラが回転している限り、対水速度が低くても進路を維持・変更でき、舵の役割を果たす。

ドライブ艇や船外機艇のブローチング耐性の源泉
ドライブ艇や船外機艇は、プロペラの向きを変えて舵を効かせるため、ブローチング時でも船の向きを変えやすい特徴がある。水中でプロペラが回転している限り、進路を維持・変更できるため、舵板で舵を利かせるシャフト船に比べてブローチング耐性が高いと考えられる。

シャフト船の転覆耐性は高い可能性
シャフト船はエンジンの搭載位置が低く、重心が低い設計が多いため、船の姿勢が安定している可能性が高い。そのため、ブローチングに翻弄されても転覆しにくい場合がある。転覆を避けられる限り、ブローチングの影響を受けつつも安全に帰港できる可能性がある。

ドライブ艇が最適?だがその選択は容易ではない
ドライブ艇はブローチング耐性も転覆耐性も高い可能性があるが、必ずしも最適な選択肢とは言えない。例えば、海水に対する耐久性や維持費なども考慮する必要がある。(詳細はココを参照)

いずれにしても、ブローチング耐性に限って言えば、シャフト船は他の方式より脆弱である可能性が高い。これが筆者の現時点(2024年10月13日)での見解である。

今回は以上。

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