Netflixでアニメ「葬送のフリーレン」に出会い、還暦オジサンは衝撃を受けた。
設定の斬新さ、物語世界の静かな美しさ、登場人物たちの心理描写の見事さ、そしてそれにマッチした絵柄。すべてが素晴らしい。
アニメ終了後に原作漫画を読み始めたが、アニメ化による悪しき改変は感じられなかった。
本作の最大の魅力は、数十年の寿命しかない人間と、千年単位で生きるエルフのフリーレンが織りなす、不思議で切ない心の交流にある。説明的なセリフに頼らず、表情や行動から心の奥底にある信頼や慕情を描く。こうした余韻のある表現が、なんとも味わい深い。
勇者が魔王を倒した“その後”を描く新鮮な設定
ビッグイベント後の変質した世界を舞台にした作品は多い。「北斗の拳」や「マッドマックス」シリーズは、文明崩壊後の混沌を描いている。一方、「葬送のフリーレン」は勇者が魔王を倒し、平和が訪れた世界を舞台にしている。この視点は独自性が高く、類似の作品はほぼ見当たらない。(2018年に「勇者ご一行の帰り道」という作品が発表されており、これから読んでみる予定だ。)
魔王討伐から数十年後、主人公フリーレンは新たな仲間と旅を続ける。魔物の残党を討伐しつつ、人類社会の権力争いにも巻き込まれていく。その長寿ゆえ、現在の仲間ともいずれ死別する運命にある。かつての師匠や仲間たちとの死別や回想が描かれるたび、彼女が抱える喪失の深さに眩暈がしそうだ。
「葬送のフリーレン」は必読・必見の名作
まだ完結しておらず、今後の展開が気になるが、現時点で十分に傑作と言える。たとえこの先、失速しても、この物語の魅力は揺るがない。未読の方は、ぜひ「葬送のフリーレン」を観たり読んだりしてほしい。
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