問診を進める中で、患者の話に一貫性がない ことがある。
主訴が変わったり、症状の程度が変わったり、現病歴の内容が揺れ動いたりする場合だ。
こうした患者は、多くの場合「特定の希望」を持っている。
医師がその希望に沿う発言をするまで、患者が話を引き延ばしていることが多い。以下に患者が持っている特定の希望の2つの具体例を示そう。
よくあるケース① 点滴を希望する患者
例えば、「疲れたから点滴を打ってほしい」 という希望を持つ患者がいる。
しかし、点滴が適応にならない場合、患者が端的にその希望を伝えると保険診療のルール上、医師から断られる可能性がある。
そこで、こうした患者は**「体調がすぐれない」「食欲がない」「なんとなく調子が悪い」** などと訴え、
医師が「では、点滴でもしていきますか?」と言い出すのを待つことがある。
よくあるケース② 事後的な診断書を求める患者
もう一つ多いのが、後から診断書を求めるケース だ。
例えば、会社を休んだ後に、勤務先から「医療機関で診断書をもらってこい」と指示されるケース である。
この場合、診察していない患者の診断書は原則として書けない。
なぜなら、医師が診察していない以上、
- 仕事を休んだ時点の体調を診察していない
- 自宅療養を指示したわけではない
という理由で、医学的に診断書の作成が不可能だから だ。
しかし、患者側は診断書がないと会社から叱られるため、診察室で粘ることが多い。
対応のポイント
患者の話が二転三転し、①主訴の変化、②問題意識の所在の曖昧さ、③希望の不明確さ が見られる場合、
患者が 「何か特定の対応を期待している可能性が高い」。
そこで、まず患者の希望を直接尋ねる のも一つの方法だ。
もし、
- 医学的に適応のない点滴
- 書くことができない診断書
を求めている場合は、
柔和かつ受容的な態度(ここが極めて重要で、決して図星を突くようなことは言ってはいけない)で、その理由を丁寧に説明し、お引き取りいただくしかない。
適切な対応を心がけることで、患者との不要な摩擦を避け、診療の効率を向上させることができる。
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