医師の求人・給与事情

医師の求人・給与の事情についていつものように『理屈コネ太郎』が理屈をこねる。いつものごとくどこかに間違いがあってもスルーでPlease.

大学病院や大手ブランド病院では話が違うが、ここではちょっと大きな私立病院や地方の公立私立病院の求人事情を紹介して、そうした現状の知識をもって皆さんが受診戦術をたてる上での役にたてば幸いである。

まず、私『理屈コネ』太郎の、労働者としての立ち位置を明確にしたい。

『理屈コネ太郎』はフリーランス医師である。基本的には日当で働いていて、お給料は報酬ではなく給与の名目で頂戴している。

現在はとある病院に非常勤医師として勤務しているが、この病院からは社会保障費は一切支払ってもらっていない。健康保険料や年金保険料は100%自分で支払っている。

私は現在の病院にかれこれ15年位務めているが、自分の市場価値の確認と、他のより良い選択肢追及のために、医師の求人サイトには常に目を通している。

さて、こうした医師求人サイトで医師が募集される形態は、①常勤、②非常勤、③スポット勤務の3種類。

常勤とは、一般的な会社員と同じで所得税・住民税が源泉徴収され、社会保険料の半分を職場が負担してくれる。

その代わりというと語弊があるが、常勤は病院の方針に基本的には従わなくてはならない。雇用時の契約にもよるが、色々と病院の雑務もやらなくてはならない。

この場合、医師にとっても収入は給与なので、勉強するための書籍購入費や学会やセミナー参加費は税制上控除されない。

雇用時にそのように約束すれば、病院が本を購入してくれるし、セミナーや学会への参加費も出してくれることもある。

手元にある求人情報では、常勤医師の年収は5日/週の勤務で1200万円~2400万円くらいかな。

外傷処置対応なし、救急対応なし、一般内科外来業務のみ、当直なし、CT読影不要、内視鏡なしって感じの条件だと、1200万円くらい。

外傷対応あり、救急対応あり、当直あり、CT読影必須、上部・下部内視鏡必須って条件だと格段に額は上がって2500万円位の求人もたまに見かける。

3000万円を超える求人はまだ見た事がない。私の周囲には医師の所得だけで3000万円を超える人は1人もいない。

次に非常勤医師。基本的に日給や時給で働く。週に何日働くか、当直の有無で給与は変わるし、担当する検査や業務内容などで時給も変わる。

高度な検査・治療技術をもっていて、かつ多忙な業務に耐性が高い人ほど市場価値は高くなる。

日当は高いと大体120000円プラス交通費であるし、安ければ日当70000円交通費込だったりもする。

常勤と同様に給与所得なので個人の勉強目的の書籍代やセミナーや学会参加費は税制上は必要経費として控除されない。常勤(サラリーマンと同じ)と同様に基本的な控除は給与所得控除が全てである。

交通費については、ケースバイケースだ。支給される場合もあればそうでない場合もある。

さてスポット勤務である。これは、医療機関の常勤医師や非常勤医師が休暇をとったり退職したりした際に、業務に穴を開けないためにとりあえず職務を代行してくれる医師を病院が募集しているってこと。

要は、その日のその時間帯にその業務だけを遂行する勤務の事をスポット勤務と呼ぶ。

あちこちのスポットの仕事だけで生活している医師もいる。『理屈コネ太郎』の印象に過ぎないが、”流れ包丁”ならぬ”流れ医師”って感じの医師が多いような印象を勝手に持っている。

何度かスポットで同じ医療機関で勤務すると、通常は常勤か非常勤業務に誘われる。だって、その業務を担当する人が何等かの理由で不在になったからスポット求人を医療機関は出しているのだから。

でも、その誘いを頑なに断ってただただスポット勤務だけで生活している医師を実際に何人か知っているが、ある人は海外の危険な登山、別の人は国境なき医師団活動とかに夢中な人だった。勿論、ここで言及した医師はみな男女問わず独身者である。

話しを元にもどすと、スポット求人の業務内容は胃カメラや大腸カメラの実施であったり、心エコーだったり心電図読影だったり、移動健診だったり、インフルエンザ予防接種前診断だったり、これまた色々だ。

研修医でも出来る業務で完結する勤務もあれば、それなりのスキルがなくては完遂出来ない勤務もある。

当然、その業務の難易度や症例数によって日当はピンキリだが、同じスキルレベルが求められているならスポット勤務は非常勤の日当と同程度な印象である。

スポット求人というのはなかなか興味深くて、私の手元には北海道の公営医療機関が実施する移動健診のスポット医師募集の広告が、エージェントを通して頻回に来ている。

往復の交通費は別途支払いで、病院最寄の飛行場から病院までのタクシー代は往復支給されことが多いが、自宅から自宅最寄の飛行場までの交通費は支給されない事が多い。

日当は健診なのでやや低い印象。健診には医師として高いレベルのスキルは求められていないと言う事。

この公営医療機関、急に医師が退職したか、町か市の大物議員が急に健診事業に熱心になったかは知らないが、よほど困っているんだなあ。誰か良い先生が見つかりますように。

ところで、つい20年位前までは、信じられない事に医師は自分の就職先を自分で探す事ができなかった。

医師は医師免許取得後に大抵の場合は、まずは大学病院に勤めて、教授の采配にしたがってあっちこっちの病院を転々とさせられながら、最終的には大学病院でのポストを目指す気持ちを心の片隅に宿していたりしたものだ。

言い換えると、医師の就職先はまずは大学病院の教授に決定権があった。諸事情によりそうした人事から外れた医師が開業医になったものだった。

それ程の人事権を掌握していた医学部教授であるから、さぞや給料も高いだろうと思われるかもしれないが、あにはからんや、それがそれほどでもなかったのである。

権力は金を求めるものなのか、何度もリメイクされた山崎豊子の小説”白い巨塔”の財前教授のような野心家が生々しい事件を起こした事も過去にはあったらしい。あくまで伝聞だが。

しかし過去はしらず、現在の医学部教授にはそれほどの人事権もなければ野心を持つ人も少ない。因みに給与は相変わらず高くはない。

ところで医師(に限らず医療従事者)の給料というのは、都市部ほど、またブランド力の高い病院ほど安くなる顕著な傾向がある。

その傾向通り、医療界最高のブランド病院群である大学病院で診療科長を務める医学部教授の給料は、その重責を考慮するとても安い。安すぎると言ってもいいだろう。

教授でも給与が安いのだから、その序列の下位にいる人達の給与も安い。

なぜ安い給与なのにブランド病院で働く医師が絶えないのか。『理屈コネ太郎』の管見による私見だが、ブランド病院で働きたい医師たちは、ようするに履歴書を盛ってみたい人達なのではないかと思っている。

『理屈コネ太郎』がそう考える根拠のひとつとして、そういう都会のブランド病院の医師達やたらと入れ替わりが激しい事があげられる。

いわゆる中堅層以上の医師が、ブランド病院では層が薄いのだ。

あ、勿論熱い使命感からそういう場所でバリバリと働き続ける人もいる。しかしそういう人も結婚し家族を持ち、子供の高額な教育費や住宅ローンを抱える頃になるととだんだんと様子が変わってくる。

自身が医師であるだけに配偶者が子供の情熱にかける意欲はハンパない。当然、教育費も高くなりがちだ。

都会のブランド病院で長年働けられる医師は経済的な理由で少ないのだ。

経済的理由でブランド病院を辞めた医師は私の周囲に沢山いる。もちろん例外もあるが、そういう例外はたいていの場合、実家が裕福か、配偶者も医師であるか、配偶者の実家が裕福かのいづれかだ。

近年は医療界に色々な変化が起きて、今や民間企業が医師や医療機関の転職 Agent として機能している。

これは凄い変化なのだ。

おかげで、医師にも病院にも、双方に選択肢が増えた。

そして私自身もこうした Agent のおかげで今の勤務先病院と出会い、もう15年位仕事をさせて貰っている。小さな不満は当然あるが、だいたいのところでは大満足な職場である。ほぼほぼ、快適である。

しかしそれでも、私は Agent から提供される募集情報に必ず目を通す事にしている。自分という医師が、いまどのような市場価値をもっているか知るために。そしてよりよい選択肢を模索するために。

医療の世界は日進月歩である。常にCatch Upの精神が大切だ。進歩できる職場、チャレンジ出来る職場でないと、医師として働くモチベーションの維持は本当に困難なのだ。

医師向け転職Agentが扱う案件は、ちょっと田舎のノンブランド医療機関の求人だ。こういう案件は給料が高い。

一方、前述したように都会のブランド病院は自分で力で医師を含めた医療従事者を採用できる。都会にあってブランド病院だったら、一度は働いてみたいって人は多いのだ。

給料の比較的低い都会のブランド病院の医師(ここには研修医も含まれる)、田舎のノンブランド病院の医師、所得がピンキリの開業医。こういう医師達の給与の平均値が、よく雑誌などで発表される職業別給料平均値に載せられるやつだ。

手元の資料では、医師の平均年収は約1100万円(男女含む)との事。この数字は既述したように、都会のブランド病院に勤務している医師や、ピンキリの開業医や1日/週で働くママさん医師も含む。

年収1100万円とは、手取りで750~850万円くらい。他職種と比べれば高給取と言えるとは思う。でも、平均年収なので、これより低い医師もそれなりの数で存在するという事だ。

余談だが、私は社会人大学院でファイナンス専攻で修士をとった。その時のクラスメイトには、金融機関につとめる人が多数いたが、外資系投資銀行の給与は2000~3000万円がざらにいるとの事。

ほんとかよ?と思って自分で調べたら本当だったのでひっくり返るくらい驚いた。

でも、給与の額を比べてもあまり意味はない。それは過去の精算としての現在でしかない。大切なのは未来だ。だから、どんな職業についていても、自分の能力的な可能性を最大限に顕現させるための努力をするだけである。

あ、因みに本頁で記載した給与とか日当とかは、すべて税引前の金額である。常勤医以外の給与・日当については、所得税、住民税、健康保険料、年金保険料等を支払うと、手元に残るのは3/5~半額程度だとご理解いただけると、それほど間違っていないと思う。

医学部で6年(全て必修。単位を落とすと留年決定)、初期臨床研修医で2年、その後の数年のハードなOJTが求められる専門職で、果たしてこの給与が妥当かどうかは色々と議論の分かれる所である。

実際に、いま医療界で起きている現象として、若い医師が勤務がハードな外科系や循環器内科を忌避して、比較的マイルドな勤務が可能が診療科に人が集まりつつある。

彼らが第一線に立つ15年後の診療科別の医師数分布が興味深い『理屈コネ太郎』である。

今回は以上。

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