幸村誠著『プラネテス』全4巻について『理屈コネ太郎』がコネる。
間違いがあってもスルーでPlease.
本作は哲学書であるな…とは、『理屈コネ太郎』の読了後に思ったこと。
物語の舞台は未来の宇宙。
そこで日々起きる事象は、人類ならばこういう未来を展開するに違いないと読者が自然と納得してしまう感じ。
ああ、人類なら100パーそうするよねって感じの事象ばかり。
人類の宇宙への行動範囲の拡大は、地球の周回軌道上を高速で移動する大量のにゴミを発生させる。スペースデブリ(Wikipedia当該頁を開く)である。
そして高速で移動するスペースデブリが宇宙船や人工衛星に衝突することで、人類の宇宙活動の障害になる。そうした障害を予防するため、人類はスペースデブリを捕獲・回収する専門職を誕生させた。
主人公は、スペースデブリを捕獲・回収するデブリ回収業に従事している。
地球の周回軌道上を秒速8キロメートルの超高速で移動するデブリを確保・回収する作業は、主人公が活躍する時代においては命がけの行為でもある。
彼は常に、星の光が散りばめられた漆黒で広漠な宇宙と、青い地球の間に挟まれて生活している。
彼の視界の一方は青い地球に占められ、もう一方は広漠とした漆黒の宇宙空間で占められている。
そして主人公は社会性があり楽天家で、Outgoingであるが、内省的・内向的な人物だ。
そんな彼の胸中に去来する想い、衝動。生きる意味についての自問と自答。
そしてふつらふつらと胸に湧いて出る、これまで以上の深い宇宙、遠い惑星に行く渇望。
そう本作は、未来の宇宙空間で生きる男が抱くであろう生きる意味への問いと答えの往ったり来たりについての思考実験。
物語中、主人公は幾つかの成長を遂げる、その成長の場面は『理屈コネ太郎』の意見としては、漫画であるからこそ読者に理解せしむる事が可能なのだと思う。
役者が表情や眼でセリフ以上の情報伝達を行うように、筆致力のある作者が描く主人公には、表情や間で心象風景が巧みに表現されている。
僅か4巻の短編漫画だが、世界観と主人公の心象風景が完璧に表現された、”句読点”が確りしている完成された作品だ。
別の頁で紹介した、たかみち著『百万畳ラビリンス』に匹敵する、傑作短編漫画である。(当サイト内当該頁を開く)