新造人間キャシャーン ルナ、その愛

新造人間キャシャーン』1973年10月2日から1974年6月25日まで放送された全35話のTVアニメである。欧州をどこかを思わせる謎の場所で、世界的ロボット工学の権威、東博士が作ったロボットが雷撃によって狂いだし、自らをブライキングボスと名乗り、多数のロボットで構成されるアンドロ軍団を配下に従え、人間を支配下に置くための侵略を開始する。

人類が防戦一方の戦況を目の当たりにした東博士の息子の鉄也は、二度と人間には戻れない事を覚悟のうえで無敵の新造人間キャシャーンとなり、ロボット犬フレンダー、幼馴染の上月ルナと共に、人類に再び平和を取り戻すため、アンドロ軍団に戦いを挑む。

新造人間となったキャシャーンの強さは凄まじく、ブライキングボスをはじめロボット軍団のどの機体よりも強い。しかし、キャシャーンのエネルギー源が太陽の光である事から、夜間の戦闘などで脆弱さを露呈する事もある。

そんなときは、ロボット犬フレンダーが強い味方になってくれる。飛行機や潜水艇やバイクの様な乗り物に変身してキャシャーンの移動の手段になるだけでなく、フレンダー自身も高い戦闘力があり、また、フレンダーはキャシャーンになる前の鉄也の愛犬ラッキーに似せて作られたため、キャシャーンの心の慰めにもなった。

また、鉄也の幼馴染の上月ルナは、ロボットだけに殺傷効果があるMF銃でロボット軍団にキャシャーンと共に立ち向かう。

ルナの父は電子工学の世界的権威で、アンドロ軍団に立ち向かう鉄也のためにMF銃を完成させたのだ。

当初、ルナには新造人間になってしまった事実を隠していた鉄也は、キャシャーンと名乗る自分は鉄也に似てはいても全くの別人なのだ…と言い張っていた。

しかしロボット軍団との戦闘でキャシャーンの凄まじいい戦闘力を目の当たりにしたルナに、かつて鉄也であった自分は今は強烈な戦闘力を持つ新造人間キャシャーンであり、だからもはや鉄也ではないのだと告げる。

そんなキャシャーンにルナは、自分もキャシャーンと一緒にロボット軍団と戦うと主張する。

孤独な闘いと思い定めていたキャシャーンはその申し出を事わり、アンドロ軍団に殺害された亡き上月博士が残したMF銃で身を守りながら他国に逃れろとルナを諭す。

ルナは、上月博士はMF銃はロボット軍団と戦う鉄也さんのために作ったものだと言って、MF銃をキャシャーンに手渡し、自分は1人モーターボートに乗って別れを告げる。

上月博士の考え、ルナの想いに打たれたキャシャーンは先回りしてルナを海上で待ち伏せし、ルナ、死ぬときは一緒だ!と言って共闘を誓うのだった。

あるとき、キャシャーンとルナは東博士が白鳥に似せて作ったロボットスワニーと出会う。スワニーは愛玩ロボットとしてブライキングボスの傍にいる。そしてスワニーの電子頭脳には、東博士の妻、鉄也の母であるみどりの記憶と精神性が移植されていた。

スワニーは眼からの光線を中空に放ち、みどりの姿を映し出し、みどりの思考や心を表現する事が出来た。

スワニーは、アンドロ軍団の中の情報をキャシャーン達に届ける事もする。

度重なる激しい戦闘乗り越えて、幾度もの絶体絶命の危機を潜り抜け、ついにキャシャーンはブライキングボスを破壊する事に成功し、アンドロ軍団を壊滅させる。

キャシャーンの働きで、人類に平和が戻ってきた。

東博士の科学力で、スワニーの電子頭脳からみどりの記憶と精神性がみどりの肉体に戻され、ふたたび1人の人間としてみどりはかつてのように生活できるようになる。

その現場を目の当たりにした上月ルナは、キャシャーンもまた人間の東鉄也も戻れる事を期待したに違いない。

死ぬときは一緒と誓いあったあの時から、ルナは常にキャシャーンのそばにいて、生死を共にしてきた。

ルナの心の中に、鉄也への慕情がなかったはずがない。キャシャーンと共に戦う事をルナが熱望したのは、鉄也への思慕があったからだ。

アンドロ軍団に父を殺された恨みだけで歩けるほど、キャシャーンと歩んだ修羅の道は生易しいものではなかったはずだ。

潜り抜けた修羅場のあとの安らぎのひと時のなかで、ルナは鉄也の温もりを感じたいと何度も思っただろう。

ありがとうルナ。よくやったねルナ。助かったよルナ。

そんな言葉を囁かれたかっただろう。いや、キャシャーンはもしかしたらそうした言葉をルナに伝えたかも知れない。

であれば猶更、ルナは鉄也の胸中に自分と同じ情熱が燃えていると知りたかったはずだ。

死ぬときは一緒だと言ったキャシャーンの心に、ルナと同じ気持ちがないはずがない。

そして、キャシャーンが鉄也に戻れたならば、鉄也の胸の中で、その胸の奥で燃える情熱を感じたかった。

だが、タツノコプロはご都合主義は許さない。テッカマンでも、ガッチャマンでも、甘っちょろいエンディングにしなかった。当初の設定通り、キャシャーンは人間に戻れない。しかし、現時点では…との留保が視聴者の心を慰める。

今後の東博士の研究次第で、キャシャーンは鉄也に戻れるかもしれない。

そうしたらルナは、アンドロ軍団との闘いがどれほど怖くて、でもキャシャーンと一緒にいられてどれほど心強かったかを語りながら、鉄也の胸のなかで思い切り甘えられるだろう。

1人生身の人間でありながら、鉄塊のアンドロ軍団と新造人間キャシャーンの間で繰り広げられる壮絶な戦闘を生き延びたルナには、そうした幸福な未来が相応しい。

今回は以上。

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