社会からの逸脱の多くが、疾病の枠組みで捉えられ医療による治療対象と考えれるようになった。アルコール依存症、薬物依存症、喫煙依存症などがそうした逸脱の良い例であろう。
最近では、家庭内暴力、児童虐待、育児放棄なども逸脱として捉えられている。これらは、個人的嗜好の問題であったり、薬物の強い習慣性であったりが原因として捉えられていて、50年位前の社会ではこれらは問題行動ではあるけれど、医学的医療の対象になるとはだれも思わなかった。
本書はこのような社会のトレンドを政治的な力学作用の結果なのだ…として説明している。
私『理屈コネ太郎』の考えだが、逸脱の医療化への医療側からの原動力として”認知行療法”の発達と普及が大きいと思う。考え方や認知の歪みを良い方向に変えることで問題行動を減少させようとする認知行動療法は、”治療”という概念に親和性が高いのだ。
ところで最近、公認心理士という国家資格が誕生した。心理系唯一の国家資格である。既存の臨床心理士はすでに社会で活躍をしているので、新たに公認心理士の誕生で心理職者は次第に増加するだろう。
もしそうなれば、逸脱は医療職ではなく、心理職が扱う問題となるかも知れない。ただ、医療における健康保険のように、心理職へのファイナンスも必要となるとは思う。