船外機の2機掛けと1機掛け、どちらが目的や価値観にマッチするか?
本記事では、当サイト筆者の理屈コネ太郎が、それぞれの安全性・操舵性・推力・燃費・コストを、実際の使用感に基づいて比較します。
対象はあくまで船外機構成であり、船内機や船内外機との比較は行いません。内容は筆者の体験と見解に基づくものです。
Contents
要約(30秒でわかる結論)
観点 | 2機掛け | 1機掛け | ひと言評価 |
---|---|---|---|
安全性 | ◎ 故障時も航行継続が可能 | △ 故障で航行不能のリスク | 外洋航行では2機が安心 |
操舵性・接岸 | ◎ 低速旋回が得意 | ○ 工夫次第で対応可能 | 狭いマリーナでは2機有利 |
加速・推力 | ○ 約1.6〜1.8倍 | ○〜◎ 大馬力1基の方が伸びやすい | 条件によって差あり |
燃費 | △ 燃料消費は多い | ◎ 効率的 | コスト重視なら1機 |
初期・維持費 | △ 高い | ◎ 低い | 予算重視は1基 |
重量バランス | △ 船尾が重くなる | ◎ 安定しやすい | 喫水・トリムに影響 |
見た目 | ◎ 力強くカッコイイ | ○ シンプルで美しい | 完全に主観 |
1. 船外機2機掛けのメリット
1-1. 安全余力の確保(万が一に備える安心)
2機掛けの最大の利点は、安全上の余裕が生まれることです。
片側のエンジンが故障しても、もう一方で航行を続けられるため、帰還できる確率が高まります。
外洋航行や長距離クルーズなど、救援がすぐ得られない状況では非常に重要なポイントです。(船外機の信頼性は高く、メンテナンスさえよければ故障する事はまずありませんた)
また、2基に負荷を分散できるため、各エンジンへの負担が軽減され、結果的に寿命が延びるとも言われています。
1-2. 加速力と推力の向上
2機にすることで、推力と加速力が向上します。
ただし、理論上の2倍にはならず、実際の増加は約1.6〜1.8倍程度。
理由は、2つのプロペラが発生する水流が干渉するためです。
たとえば、400馬力の1基と250馬力の2基では、推力面でほぼ同等と考えられます。
1-3. 操舵性の向上(狭い場所での取り回し)
2機掛けの大きな利点のひとつが、取り回しの良さです。
停止時に左右のエンジンを逆方向に回せば、その場で旋回することも可能。
狭いマリーナや強風下の接岸でも、自在なコントロールがしやすい構成です。
1-4. デザイン性・迫力
筆者の主観ですが、2機掛けは見た目にも迫力があります。
左右対称のバランスと存在感は、船体全体を引き締め、「オレの船、かっけえ~」という所有欲を満たしてくれます。
1-5. 船内機からのコンバートに適している
別記事船外機仕様への変更を数多く見かけるに詳述したように、古い船内機艇や船内外機艇の推進システムを最新化する際、船外機2機掛けへの換装が選ばれることが多いようです。
メンテナンス性が向上し、スロットルレスポンスの良さも得られます。
ただし、船尾が長くなり係留費に影響する可能性があるため、事前の検討が必要です。
また、最近、特に北米では、以前は船内機しか選択肢のなかったやや大型の船に3基・4基(あるいはそれ以上)を搭載することも珍しくありません。
トランサム構造にもよりますが、「必要な出力をあとから足せる」のは船外機ならではの魅力です。

2. 船外機2機掛けのデメリット
2-1. コストの増大
最大の欠点はコストです。
エンジン本体が2基分必要なほか、制御装置・リギング・燃料ホースなども倍増します。
燃費も悪化しやすく、初期費用・維持費ともに上昇します。
2-2. 推進効率の低下
2機掛けは抵抗が増えるため、同等出力(例:150馬力×2と300馬力×1)では1基の方が効率的です。
また、プロペラの干渉によって、燃費は約10〜20%悪化する傾向があります。
経済性を重視するなら、1機掛けが有利です。
2-3. メンテナンス作業が倍増
帰港後のチルトアップや冷却経路の真水洗浄(フラッシング)など、
基本的な手入れが単純に2倍の手間となります。(詳細は『船外機の出航前・帰港後メンテナンス|チルト・冷却水洗浄の手順』参照)
頻繁に乗る場合は、まとめて作業するルーチン化で軽減が可能です。
3. どう選ぶべきか(用途別ガイド)
利用スタイル | 向いている構成 | 理由 |
---|---|---|
外洋・長距離・離島航行 | 2機掛け | 故障時の安心感と取り回し |
内湾・日帰り・コスト重視 | 1機掛け | 軽量・低燃費・維持が楽 |
頻繁な接岸・マリーナ利用 | 2機掛け | 狭い港内での操船性 |
高速巡航・トップスピード重視 | 1機掛け(大馬力) | 抵抗が少なく効率的 |
4. 推力「約1.7倍」が目安
2基の推力は理論的には単純加算できません。
干渉、トランサム形状、エンジン間隔、プロペラ径などによって、実効推力は変化します。
一般的には1.6〜1.8倍が目安です。
プロペラ選定を最適化すれば効率を高めることも可能ですが、これはかなりマニアックな領域。
多くのボーターにとって、標準プロペラ+実航行検証が現実的な選択でしょう。
5. まとめ
安全余力と操船自由度を求めるなら2機掛け
燃費・コスト・軽快感を求めるなら1機掛け
推力は2倍ではなく約1.7倍前後
航行目的と予算・保守体制のバランスで選ぶのが最適解
よくある質問(FAQ)
Q1. 片側が故障しても走れる?
A. 走行は可能です。故障した側の船外機をチルトアップすれば、ほぼ1機掛けと同様に走行できます。
ただし、重心と稼働軸のズレで操舵感は変化します。海況や潮流にも注意が必要です。
Q2. メンテナンスはどのくらい大変?
A. 基本的には作業量が倍になります。創意工夫で工程を減らすことはできますが、1機掛けと同等まで減らすのは困難です。
Q3. 実際の燃費差は?
A. 同馬力同士で比較すると、2機構成は1基より約10〜20%悪化すると言われています。
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