本ページでは、船外機、船内機、船内外機の概要を説明し、それぞれのメリットとデメリットを整理した。
プレジャーボートの推進方式は大きく分けて3種類あり、①船外機式、②船内機式、③船内外機式を理解すればほぼカバーできるので、今回はこの3方式のみを取り扱うこととする。
本ページの記載内容はあくまで理屈コネ太郎の管見内の独断と偏見による私見であるとご銘記のうえ幸甚だ。。
船外機式(アウトボード)
船外機式は、船外機とよばれるメカニズムの塊が写真1のように船の一番後ろに取り付けられており、メンテナンスが非常にしやすいのが特徴。
進路変更は船外機全体が左右にスイングすることで行われので舵板はない。
また、船外機全体をチルトアップ(傾けて)することで、写真3のように海水からほぼ完全に隔離できるので、腐食やフジツボの付着を防ぐことができる。
陸置きの場合は、写真4のような状態。
写真2は陸置きの船外機の三機掛けの船。右側ふたつの船外機のプロペラが右回転、左の船体機のプロペラが左回転。
写真3は、海上係留の二基掛け艇の船外機をチルトさせてプロペラ部分を海水から上げた状態。
同じ船を陸置きした状態で船外機をチルトすると写真4の感じになる。
- メリット
- 小回りが利く。
- 修理や交換が他の方式に比較して簡単
- 海水によるフジツボ付着や腐食などの悪影響を受けにくい
- プロペラにロープが絡んでも海上で対処可能
- プレーニングする艇に向いている
- 船艇にシャフトが貫通する孔がないので、喫水より下方に孔がなく、浸水リスクが低い。
- デメリット
- ガソリンエンジンのため燃料コストが高い
- 大型船にはやや不向き
- トランサムに船外機が場所を占めので、船外機が邪魔で釣りにはやや不向きかも。
船内機式(インボード、あるいはシャフト)
船内機式は、写真5のようにエンジンを船内の中央部に配置し、シャフトが船底を貫通してプロペラを回転させて推進力を得る方式。
歴史が長く、技術が成熟しているため、非常に信頼性が高い方式。
また、船内機式は、舵板を使用して進路を変更するため、推進と操舵の機構がが分離している事も特徴である。
写真5は、典型的な船内機艇。船内にエンジンを置き、そこから伸びたシャフトが船艇を貫通しプロペラに連結している。
分かりやすくするため、船艇を貫通して出るシャフトとその末端にあるプロペラを赤い線で囲ってみよう(写真6)。
これでもまだ分かり憎いと思うので、赤線周囲を拡大してみる(写真7)。
シャフト船だけに見られる舵板を緑の線で囲って写真8で示す。因に、船内機艇や後述する船内外機艇には舵板はない。
船内機艇にも、エンジンを複数搭載して、複数のプロペラを回転させる艇もある。
手前のシャフトとプロペラは分かりやすいですが、反対側はこの写真ではプロペラとシャフトの極一部が見えるだけ。
一軸艇と同様に、二軸艇においても舵板を緑の線で囲んで下記の写真10で示す。
シャフト艇では、プロペラはいつも同じ位置で同じ方向に回転して推進力を生んでいる。そのため、進路変更にはいわゆる上の写真で示した舵板という古典的なメカニズムを使用する。こういう点も、船内機艇の信頼性が高い理由かもしれません。
既述した通り、船内機は歴史がながく、技術が成熟していることが大切なポイント。ただ、1基掛けの場合、ちょっと太めのロープなどがプロペラに絡んだら、海中に潜って遺物を取り除かないかりぎ、推力を失ってしまうだろう。
- メリット
- エンジンを船の中央の船底に配置するため安定性が高い
- エンジンを置く空間が広いので、サイズが大きくなりやすいディーゼルエンジンを使用でき、信頼性が高い
- メカニズムがシンプルで、歴史が長く耐久性や信頼性が高い
- デメリット
- 浅い海域では使いにくい。
- 座礁した場合はプロペラが船艇を傷つける可能性がある。
- エンジンが運転席に近いので騒音が大きい。
- エンジン搭載位置のために、修理に手間がかかる。
- シャフトが貫通する部分のシーリングが不調になると、水が浸入するリスクがある
- 1基掛けの場合、沖でプロペラにロープなどが絡んだら海中に潜って(ソロでは極めて危険)異物を除去しないかぎり推力喪失のおそれあり
船内外機艇(ドライブ艇、イン・アウト艇、スターン艇)
船内外機式は、船外機と船内機の良い部分を組み合わせた方式。写真11のようにエンジンは船内にあり、プロペラは船外に設置されているアウトドライブを介して回転する。
船外機と同様に、このプロペラを左右に振ることで進路を変更する。
チルト機能もあり、海水の影響をある程度避けられる。
また、この方式では「二重反転プロペラ」という技術が採用されていることもある。
写真12に示すように、二重反転プロペラは、同軸上に配置された2つのプロペラが反対方向に回転することで、効率的に推進力を得る仕組み。このメカニズムにより、より強力で効率的な推進が可能となる。
もちろん船外機でも、二重反転プロペラを採用している例があり、写真14にあるスズキの船外機がその例です。
すこし分かり憎いので、船外に出ているメカニズムを赤線で囲ってみたのが下の写真12。
赤い部分はエンジンから取り出した動力をプロペラに伝達する部分である。この部分が左右にスイングする事で進路を変える事が出来る。
- メリット
- 船内機同様に頑丈なディーゼルエンジンを使用できる。
- 小回りが利く
- 二重反転プロペラで効率的な推進が可能
- エンジンが船尾にあるためシャフト艇より騒音が少ない
- 1基掛けでも、プロペラを海面近くまで挙上できる機構なので、沖合でもプロペラに絡んだロープ等を除去できる。
- デメリット
- 海中のメカニズムがトラブルを起こしやすく、海上係留には不向き。
- アウトドライブとハルの接合部の一部は喫水より下にあるので、この部分のシーリングに不具合があると浸水の可能性あり。
以上がそれぞれの推進方式の概要と、メリット・デメリットの整理です。どなたかの参考になれば幸いです。
因みに…であるが、写真11と12の船内外機は、既述した二重反転プロペラという方式を採用している。同様のメカニズムを写真13に示す。
二重反転プロペラは船外機でも見られるメカニズムである。写真14はスズキの二重反転プロペラ機構を持つ船外機。
スズキ以外にもマーキュリーなどで同様のメカニズムの船外機を販売している。
今回は以上。
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