嗚呼、香港

ブルース、あなたがいた頃の香港は中国に返還される前の香港でした。

あなたは1973年にこの世を去りました。

だからあなたは知らない筈です。1989年に天安門広場で、中国政府は自国民に戦車の砲塔を向け、民主化運動が鎮圧された事を。そしてそれは世界中に動画で報道されました。

しかし中国は、その事実を全く無視してなかったかのように振る舞っています。1989年の天安門事件を知らないのは中国の若者だけだといいます。

そしてあなたは香港人です。香港人が中国人とは一線を画す時代の香港が生んだWorld Classのスーパースターです。

だからあなたは、中国の事など興味はないというかも知れません。

でもブルース、1997年に香港は中国に返還されました。いまや、香港は中国の一部なのです。

香港返還のその時、中国は1国2制度という奇怪な概念を持ち出して、今後50年は香港の自治と自由経済を守ると約束した筈でした。

しかし2014年、中国は香港の自治にちょっかいを出し始めます。香港返還時の約束が反故にされたのです。多くの人が反対運動を起こしました。

そして2019年、中国は自分達の司法と統治メカニズムを香港に押し付け始めます。これにも強い反対が起きました。1年くらい続いた反対運動は、現時点では中国の力技で敗北を喫したように見えます。

自由と自治を訴える若いリーダーが外国勢力と結託して国家転覆を計画したとして逮捕されました。

そしてブルース、このままでは将来の香港は、間違いなくあなたが生まれ、愛した香港ではなくなるのです。

実の所、私は共産主義とかはどうでもいいのです。共産主義とか社会主義とかなんて、馬鹿な私にはイキッた男の独身主義宣言と同じ程度のものに思えます。

でも、代償と結果責任を引き受ける前提での個人の自由の行使を認めない人々とその政府が、あなたが生まれ育ったあの美しい香港を台無しにするのが私には許せないのです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です