3ペダルHパターンマニュアルトランスミッション(以下、3HM)は、2ペダル車と比較してギアチェンジに時間がかかるというのは、もはや自動車ファンの間では常識といえる。
この記事では、直線でのタイムアタック、特にゼロヨンのようなドラッグレース的シチュエーションを題材に、3HMと2ペダル車の違いについて考えていく。ただし、これから述べる内容は筆者の個人的な見解に基づくものであることを了承してほしい。
3HMは、ギアチェンジのたびにクラッチを切るだけでなく、シフトレバーを前後左右に動かす必要があり、操作が煩雑だ。また、クラッチを切るたびに駆動力が途切れ、いわゆる「トラクションゼロ」の時間が発生する。このため、3HMでタイムを競うには正確かつ素早い操作が求められる。そうした技術が「カッコいい」とされてきた時代もあった。
しかし、現代の高性能なAT車は、並みのドライバーよりも正確で迅速なギアチェンジを行う。事実、ゼロヨンではAT車が優秀な成績を収めることも珍しくない。2024年には、GRヤリスのAT仕様「GR-DAT」がRZグレードに追加される予定であり、この傾向はさらに強まるだろう。
ここで疑問に思う人もいるかもしれない。「そもそも3HMなんて面倒な操作が必要なのか?」と。実際、クラッチや変速機は内燃機関の弱点を補うための装置だ。2ペダル車がその弱点をカバーしてくれるのであれば、3HMに固執する必要はないという考え方にも一理ある。こうした理由でAT限定免許が普及するのも自然な流れだといえる。
それでも、3HM特有の「面倒くささ」を楽しむ人がいる。筆者もその一人だ。複雑な操作を駆使し、ギアチェンジがスムーズに決まったときの快感は、何物にも代えがたい。
GRヤリスには「iMT」というシフトダウン時にエンジン回転を自動で合わせる機構が搭載されている。このおかげで、神経を尖らせなくても運転できるが、筆者はこの機能を使わずに運転する派だ。なぜなら、自分の技術でエンジン回転を合わせるのが楽しいからだ。
ただ、GRヤリスのヒール&トー操作は難しい。ブレーキを深く踏まないとアクセルペダルと高さが合わず、さらにペダル間の距離が広い。筆者の足が小さいせいか、右足でブレーキとアクセルを同時に操作するのが非常に困難だ。おそらく自分の腕が未熟なのだろうが、それでもこうした操作を完璧に決められたときの満足感は格別だ。
速さを求めるなら、2ペダル車が圧倒的に有利だ。デュアルクラッチトランスミッション(DCT)やATでは、トラクションゼロの時間がなく、ギアチェンジも電光石火。状況に応じた最適なギアを選べる多段ミッションの恩恵も大きい。そのため、DCTやATのマニュアルモードは速く走りたいドライバーには非常に頼もしい存在である。
しかし、筆者のGRヤリスRZHPは3HMだ。速さを追求するのではなく、複雑な操作を駆使して走行が決まったときの達成感を楽しむためにこの車を選んだ。
そんなある日のこと。いつものワインディングロードで、地元の軽トラックが道を塞ぎ、その後ろに3台のドイツ製ミッドシップカーが大人しく追走している場面に遭遇した。軽トラックは見通しの良い場所で道を譲り、先頭のミッドシップが勢いよく加速。その後を2台目、3台目、そして筆者が追いかける形となった。
走行中、先頭のミッドシップがほとんどブレーキを使わずにコーナーに入る様子に驚いた。おそらく2ペダル車で、シフトダウンとアクセルオフだけでスムーズに減速し、旋回を開始しているのだろう。それに対し、後続の2台と筆者はブレーキを使ってフロントに荷重を移すなど、ややドタバタした印象だった。
GRヤリスにはクイックシフターやクラッチストッパーを装備しているが、2ペダル方式の圧倒的な速さには勝てない。それでも、3HMのシフトレバーを操作して走ることに魅力を感じている。
とはいえ、もしGRヤリスに2ペダル仕様が登場したら間違いなく購入するだろう。速さ、正確さ、そしてエンジンへの優しさが備わっているのだから。
結局、筆者のGRヤリスがドイツ製ミッドシップに置いて行かれるのは、3HMの仕様ゆえ仕方がないと納得するしかない。ただ、自分の技術を棚に上げていることは自覚している。
以上が筆者の現時点での愛車に対する考察である。
今回は以上ん。
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