本ページでは、GRヤリスRZHPの電スロ制御について『理屈コネ太郎』がいつもの通り知ったかぶりをするのだが、その前に、もう40年以上前の400㏄バイクでの経験をお話しておきたい。
それともう1点、本ページでは公道走行可の車両を前提としている事にもご留意いただきたい。競技用車両については全く考慮しません。
『理屈コネ太郎』が中型自動二輪免許で400㏄のバイクを浮かれ気分で乗りまわしていた頃、サードパーティーがアクセルレスポンスを向上させるチューニング機構を開発し、それが発売されたと聞いた。
その機構を装着すると、低速でのアクセルのツキが格段に良くなるというのである。
早速、調べてみると、アクセルグリップとキャブレターの間のワイヤーにカム構造を挟んで、アクセルを少し捻っただけなのに、それ以上にバタフライが開いてエンジンが回るという、なんとも単純なカラクリであった。
当時の私は、どうにもこのカラクリがエンジンの本質とは異なるところにある、ただの小細工に思えてしまい自分のバイクに採用する気にはならなかたった。
今おもえば、これはこれでひとつの解であったかもしれない。カムの偏芯による物質の移動距離の増減を否定したら、エンジンのバルブ開閉をどうしたらいいのか?ってハナシになるのに…。
当時の私はターボなどの過給器装着すらも邪道だとバカ丸出しの認識をしていた。考えが浅いって恥ずかしい。若さという可能性の代償があるからこそ許される愚かさだ。
その頃の『理屈コネ太郎』の考えるチューニングとは、オーナーやメカニックの創意と工夫によってエンジンやサスの本来的な性能を引き出して、工場出荷状態よりファインな状態にして高性能化する…というものだった。
工場出荷状態の自動車やモーターサイクルは鋳造物や溶接部位などに粗面も多く、ポートやコンロッドの研磨(今もあるのかな?)とか、キャブのジェットの番手変更&排気効率向上とか、頻繁なオイル交換でピストンとシリンダーの摩擦を常に低く保つとか、工場集荷状態の調律の乱れた楽器を調律師がチューニングするような気分で、新車に本来的な性能を取り戻せると考えていた。
その前提には、あくまで『理屈コネ太郎』個人の考えだが、メーカーは採算性を優先するために、エンジンやサスの本来性能の発揮のための最後のひと手間に消極的である…とか、行政や警察への配慮で自己規制的にデチューンしている(3ない運動真っ盛りの時代だった)…とか、要するにメーカーに対する猜疑心があった。
実はこの猜疑心は今もある。が、受容している。その理由は後述する。
若い頃の私はこの猜疑心を出発点に、メーカーが諸事情でやりたがらないひと手間をユーザーサイドで実施すればマシン本来の性能(今思えば蜃気楼を追いかけてていたような…)を引き出せる!…と、そう思っていたのだ。
初めから競技用に制作されたエンジンや車両には及ばないが、メーカーが惜しんだひと手間や行政や警察に目配りしてマシンに嵌めた手枷足枷を外してやれば、少しでも、理想のマシンに近づけると…と。
そうこうして約40年、自分自身も含めて周囲の色々な人々のクルマ人生やモーターサイクル人生を見て来て今抱くのは、どうもクルマやモーターサイクルを長持ちさせるのはノーマルのままで純正品を使い続ける事が大切なようだぞ…という確信めいた感覚である。
メジャーなシーンのレーシングカーやラリーカーの真似をして、それらに使用されるパーツ(に似たモノ)や改造をクルマに施すと、どうも寿命が短くなるようなのだ。
しかしそれは、もしかしたら当たり前なのかも知れない。メジャーなレースやラリーは競技として集中的に走行するし、ハードもソフトもマンパワーもサポートも一般ユーザーよりは充実している。なにより、スポンサーって存在もあるし。
レースやラリーでは良い結果を残す事が、日常的に長持ちすることより優先される。良い結果を出してメディアや雑誌に取り上げられればスポンサーも喜ぶ。
だから、競技終了までギリギリ壊れない領域でマシンを酷使するのが競技であろう。壊れてもルール内で修理すればよい。そのためのマンパワーとスポンサーである。そして競技は、その時がくれば必ず終わるのである。その時まで、その瞬間まで機能すればよい。
しかし市販車は、オイルやプラグやタイヤなどの消耗品の交換だけで、何万キロ、何十万キロものいつ終わるとも知れない距離と、日照りや大雨台風、氷点下などの過酷な環境下でも一定程度の性能が保証されなかければならない。
クルマ好きの私達はつい、憧れのレースカーやラリーカーに自分の愛車を近づけたいあまり、色々と余計な細工をクルマに仕込んでクルマの寿命を短くしているのかもしれないな、とそんな風に思える時がある。
この感覚を若い頃からずっと抱き続けたメーカーへの猜疑心と突き合わせて考えたとき、ふとマシン本来の性能の一歩手前までにしておくことも市販車としては重要な要件であるのかも…と考えるようになった。
時はうつろい自動車は当然としてモーターサイクルまでEFIが一般的になり、燃焼効率追求的にも排ガス対策的にも、そして何より制御の自由度の高さ的にも、もはやキャブレターは絶滅危惧種となった。
むか~し、『理屈コネ太郎』より一回り年上の先輩が、「インジェクションのクルマなんて触りたくもない」とインジェクションを蛇蝎の如くきらう発言をしていたことを思いだすと、隔世の感がある。
しかし一方で、最近、私よりも一回り若い友人が、「ビシィっと調子が出ているキャブ車に乗ったらインジェクション車には乗れないっすよ」と言ってるのを聞いててビックリした(ただ知ったかぶりして言ってるだけかもしれないけど、可愛いねえ)。
クルマやモーターサイクルを趣味の対象としている人々の胸中には様々な理想が渦巻いているのだと、感嘆すらしてしまう。
『理屈コネ太郎』は便利で信頼性の高い工業製品が好きなので内燃機関のEFI化は基本的に大賛成である。セルスターターのないキックのみのモーターサイクルには敢えて乗りたいとは思わない。『理屈コネ太郎』はセル&EFIのモーターサイクルの方が乗る事に専念できるので、好みである。
前述したように、ときどきキャブが良いと言う人もいるが、そうした人達は『理屈コネ太郎』とは異なる何かをクルマやモーターサイクルに求めているのだと解釈している。
キャブが良いとか、モーターサイクルのキックが良いとかって人は走って楽しむだけより、イジっても愉しむ人やファッション的要素を求めている人に多い印象。
あるい表計算ソフトよりも電卓を懐かしむ、更には電卓より算盤を懐かしむ、そういうノスタルジーたっぷりな職人気質の古参税理士や恐竜公認会計士のような人達なのかも…なんて思ってる。
GRヤリスの電スロ制御の話題に進める前に、もう一つ、GRヤリスとは関係ない話をするのを許して戴きたい。
現在『理屈コネ太郎』は日常のアシクルマとして日産ノートe-Power4WDを使っているのだが、このクルマの運転心地がすこぶる宜しいのである。
特に、停止状態からジリっと動き出す瞬間がとても良い感じなのである。
エンジン車では、停止中でもエンジンは回転しているので、エンジンとタイヤの連結をカットしたりコネクトしたりする機構、即ちクラッチやトルコンが必要である。
だから、エンジン車で微速で発進、停止、そしてまた微速で発進するというような状況では、どうしてもクラッチやトルコンの締結のOn/Offが車体のギクシャク感として発生しやすい。
しかし、日産ノート4WDでは、タイヤが停止しているときは駆動用モーターも停止しているので、クラッチやトルコンの締結On/Offによるギクシャク感が発生せずに極めて平滑な乗り心地が味わえる。
で、そのノート4WDには、ドライブモードをsport, eco, normalの3種類から運転者が任意に選べるようになっている。
sportモードとecoモードの加速タイミングの差は大きくて、sportモードではecoモードの時より加速が立ち上がりが半テンポ早い。ecoモードしか経験のない運転者なら、sportモードの際の加速の立ち上がりの速さに吃驚するだろう。
勿論、この違いは電子制御によるものだ。
もし、この電子制御がもう少し進歩してベイズ機能を利用した学習機能を実装したら、ドライバ-のヤル気を何等かの方法でクルマ側が感知した場合、アクセルを踏むコンマ何秒か前にモーター回転数を上げる事だって出来るようになるだろう。
もしかしたら、ドライバーの反応速度とか運転スキルとかも学習してくれるかもしれない。
ここでようやくGRヤリスの電スロの話に入る。
この予測制御がもしGRヤリスに実装されたら、ドライバーのヤル気を、例えば顔の表情や目線などのクセから、読み取って、ドライバーが実際にアクセルに入力するより加速の立ち上がりを速くするよう制御をする事だって可能になるだろう。
こうした、メーカーが施したクルマ側の小細工(計測と制御の技術としては大変に高度だとは思うが敢えてこの”小細工”という言葉をここでは使いたい)で、私は素直にGRヤリスにキャーキャー言えるだろうか。
今の段階では、答えは多分Noだ。『理屈コネ太郎』は自分のスキルを愉しみたいのだ。スキルだと思わせられたメーカーが施した小細工には騙された気分がしてしまうだろう。
しかし不思議なもので、ノートの場合、『理屈コネ太郎』はそれはそれでキャーキャー愉しめるのである。
なぜか。
たぶん、ノート4wdが駆動力そのものまで電子制御の塊だと事前に知っているからだと思う。先ほどあえて使用した”小細工”という表現の何かの集合体がノートなのだ。それはもはや”小細工”などではないだろう。
では、なぜGRヤリスにそうした制御がついた場合に喜べないかを考えると、エンジンと自分との関係にメーカーの小細工に介入される事が嫌なのだ…と思う。
そこで、「そうか、私が求めているのはエンジンという未完成な機械との直接対話とその未完成性を自らのスキルのみで補完する事なのか…」と思い至った。
だから、私は純粋エンジン駆動車であるGRヤリスに拘って夢を見ているのかも知れない。
そして、もっと強烈にエンジン駆動車の未完成性を自らの創意工夫とスキルで補完する事に情熱を燃やすクルマ好きにとっては、エンジンとの対話に介入してきて勝手に未完成性をドライバーの本来の意図とは無関係な方向に補完する電子制御は許しがたい存在かもなあ…と思うし、もしそうならその許しがたい気持ちは『理屈コネ太郎』にも理解できる。
ノート4wdはモーター駆動ゆえに、電スロどころではなく全身が電子制御の塊である。もう全てメーカーが介入しきっている。アクセルを急に抜いてもノート4WDはフロント荷重がかかっている感じがしないのに、それでもちゃんと曲がるのである。
最近では、エンジン車はエンジンの性能(燃費も性能のうち)を発揮させたりトラクションを最適化させるために電子制御に頼っている。
最終的な駆動用メカニズムがエンジンであろうとモーターであろうと、電子制御は自動車というメカニズムの隅々にまで行き渡ってしまっている。
さて、ここで『理屈コネ太郎』はふと思う。もう、アナログなエンジンと機械的な吸排気系とミッションとタイヤと点火系や給油系、灯火系という単純な構成で市販車が成立していた時代は、社会の要請的にも法規的にも終わってしまったと思うのが妥当なのではなかろうか。
いや寧ろ、内燃機関の本来の性能をより一層追求するには、電スロなどの電子制御が不可欠なのかも知れない。
燃費や環境問題なんかどうでも良いという考えも分からないでもない。だって、海運や航空機によるCO2排出に比べれば、クルマ好きがエンジンを時々高回転で回す事によるCO2排出などは、実に本当に誠に微量なはずだから。
要するに、自動車のCO2排出matterは環境問題という正義を振りかざした、あくまで『理屈コネ太郎』の個人的見解であるが、魔女狩りなのである。
しかし、メーカーはその魔女狩りの風潮のなかでも自動車を生産しなくてはならない。生産して雇用と裾野産業を維持し続けなければならない。
そしてクルマ好きには愉しめる新しいクルマの登場がなにより重要なのだ。
今後も存在しつづけるアナログ車は、ヴィンテージとして、骨董品として、人類の宝としてますます価値を持つようなオリジナル状態に極めて近い状態の個体だけだろう。
だから、そういう個体の価格は市場でどんどん上がっていくだろう。
自分達で完全に自分仕様のクルマを作る意思と能力を持たない普通のクルマ好きは、メーカーが作ってくれたクルマを、どのようにしたら合法的に自分の好みに近づけるか…という事だけが愉しめる自由度であり、余地だと思う。
その自由度や余地は今後ますます狭くなり、市販のクルマをその狭い領域で改造しようとする人は、もしかしたら結構高額な保険料を支払う時代になるかもしれない…と『理屈コネ太郎』は思っている。
自分仕様のクルマを作る意思と能力のある尖った勇気ある人達にとっては、重いタスクと高いコスト&リスクの連続になるだろう。
エネルギー供給と環境問題の板挟みや、保険会社の合理性や、独裁者たちの野心で混沌とするサプライチェーンや、世の中の雰囲気(私はコレに強烈に違和感を覚えてしまうタイプ)を考えると、メーカーがなんとか作って市場に出してくれたスポーツカーを実際に購入してメーカーの経営持続性に貢献した上で、ノーマルのままかメーカー純正品だけを使用するカスタムが、いちばんスポーツカーを愉しめる方法だと『理屈コネ太郎』は思っている。
それ以外の方法は、もしかしたらエンジンの、クルマの寿命を短くする行為であると納得した上でなら、試してみても良いとは思うけど。
あるいは、そのメーカーの株式をそれなりに買って物言う株主として電子制御のあり方を含めたこれからのクルマ作りについて経営者に物申すことをめざしても良いかもしれない。
また脱線してしまった。
勿論、改造やカスタムは他者に迷惑をかけず、事故を起こさず、警察に面倒をかけない事も大切だ。他者に迷惑をかける趣味は必ず社会から排斥されるから。
え? 結局なに言ってるのかわからないって?
スイマセン。
今回は以上ん。
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