GRヤリス、ラリー競技で4WDが有利な事の確率論的説明

本ページでは、4WDがスポーツ走行において2WDより有利な理由を確率論的に説明する。

もちろん『理屈コネ太郎』の管見による独断と偏見による私見、すなわち知ったかぶりである。

さて、4WDの2WDに対する優位性は従来『1輪あたりが担当するトラクションが小さいのでタイヤのグリップに余裕を持たせる事が出来る…』という内容だった。

要するに、大きなエンジンパワーを2輪で路面に伝えようとすると、タイヤのグリップが負けて空転するような状況でも、4輪で路面に伝えればタイヤのグリップが負けないので空転せずにクルマが前に進めます…的な説明であった。

しかし、今回は『理屈コネ太郎』オリジナルの確率論的なアプローチで説明したい。

以下、特に断りがなければ適切なLSDが組み込まれている前提での話として読み進めてもらいたい。

結論を先に呼べよう。

2WDは接地しているタイヤが駆動輪である確率は50%であるが、4WDでは非駆動輪は存在せず、接地しているタイヤは100%駆動輪なので、4WDは2WDに対して、路面へのトラクション伝達において有利なのである。

2WDのクルマで1輪のみ接地の場合、そのタイヤが駆動輪である確率は1/2。

接地タイヤが2輪の場合、その2輪が両方とも駆動輪の確率は1/6、片方だけが駆動輪である確率は2/3、両方とも非駆動輪である確率は1/6となる。

だが4WDでは接地輪は必ず駆動輪なのだ。

以上より、多少の凹凸があったり、μが不連続に変化するような路面では、4WDは2WDに比して駆動輪が接地する確率が高くなる。

ゆえに、トラクションを高い確率で路面に伝える事が出来る。

4WDでは、接地しているタイヤの数に関わらず、その全てが駆動輪なのだ。これが、ラリー競技等で走行する路面のような、μが非連続的に変化して、多少の段差が存在する道で4WDが有利な理由である。

かつてタイヤの性能が低くてグリップが足りなかったころは、エンジンの出力が大きすぎると、駆動輪のタイヤがホイールスピンを起こしトラクションを得られなかった

タイヤの性能が向上した今では余興の一種として意図的にホイールを空転させる事があるが、それはエンジンの強力ぶりを衆目に見せつけるための御遊びである。

話をもどすと、タイヤの性能が低かったころは、駆動輪が2つだけではホイールスピンを起こしてエンジンの出力をトラクションに変換する事ができず、前進できなかった。

そこで、エンジンからの動力を4つのタイヤに分散させて、性能が低いタイヤでもホイールスピンを起こさないように4つのタイヤで分担してトラクションをかけようって思想の時代があった。

勿論、エンジンパワーが4輪に分散されてもなおタイヤの性能を大幅に上回ってしまう場合、4輪全てがスピンしてトラクションは全くかからないって事もある。

そういう事態を回避するために、タイヤのグリップ内にエンジンからのパワーをコントロールするシステムが存在している。ここでは、そうしたシステムをトラクションコントロールシステム(以下、TCS)と呼ぶ事にする。

さてタイヤの性能が飛躍的に向上し、かつ精緻なTCSが実装可能な現代では、2つのタイヤでエンジン出力を受け止められるので、エンジンからの出力を4つのタイヤにわざわざ分散する意義は薄い。それどころか複雑で重たい機構が増えるだけ損かも。

現代のタイヤ性能なら前2輪、あるいは後ろ2輪だけで十分にエンジンからの出力をトラクションに変えられる。

しかし、これが成立するのは、路面のμが高値かつ均質で凸凹が極端に少ない路面という前提が必要だ

サーキットや高速道路や滑走路などでは、μが均質で殆ど凸凹のない路面が連続してコースを形成してるので、特に路面がドライな状況下では、FFだろうが、4WDだろうが、RRだろうが、MRだろうが、駆動方式はタイムにあまり意味がない。

そこでモノをいうのはタイヤの性能とエンジンの出力。それと軽さ。もし変速機がマニュアルならドライバーの腕も大切かも。

しかし一方、現実世界では、μが均質かつ凸凹が殆どない道路は存在しない。

残雪、水溜り、マンホール、ペイント、路面のひびや段差、轍、浮いた砂利、落下物その他の様々な要因でμは不均質かつ凸凹だらけだ。

以下、これまでの内容の繰り返しになる。

少し思考実験してみたい。μが不均質で多少凸凹があるような道において、2輪駆動と4輪駆動のどちらがより高い確率で地面にトラクションを掛けられるだろうか。

ジャンプ状態のように、4輪とも接地していない場合は考えない。

2輪駆動では最もラッキーな状況でもトラクションを掛けられるのは高々2輪までだ。

場合によっては1輪かも知れないし、オープンデフなら0輪駆動の瞬間だってある。

一方、オープンデフ4輪駆動では、0輪、1輪、2輪、3輪、4輪と、最大で4つのタイヤでトラクションを掛けられる事になる。

ということは、コースの状況によって1輪しか有効な接地がない瞬間に、それが駆動輪である確率は4駆は2駆の2倍だという事。

同じ道を走った場合、4WDは2WDの2倍の確率でトラクションを掛けられることになる。

これが、2輪駆動に対して4輪駆動が有利に立つ理由なのだ。グラベルやダート、あるいは半グラベルとか半ダートみたいなコースにおいて、4駆は2駆の2倍の確率で路面にトラクションを掛けられる。

複雑な4駆システムで車重が増えても構わない。逆に言えば、どんなに軽い車体でもトラクションゼロの瞬間が多発しては宜しくない。

既に言及したが、飛行場やレース場などのμが均質でフラットな路面でのゼロヨンや0-100直線タイムアタックなどは、エンジン出力とタイヤ性能次第なので、4輪駆動方式のGRヤリスに有利に働く要素はなにもない。

更にトルク切れの発生しないオートマの方が圧倒的に有利だ。

GRヤリスRZHPの素晴らしいところは、優秀な4WDシステムによってμ不均質かつ多少凸凹あるコースでもトラクションを保障しつつ、6MTによってドライバーがクルマの挙動に大きく介入する事を許しているところ。

ここが、『理屈コネ太郎』的にGRヤリスの最も愛らしいところだ。

ちょっとこれまでの記事と似通った内容になったけれど、そこは許して下さいな。

今回は以上ん。

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