撮影機材に求められる価値は、画質やセンサーサイズといった静的なスペックだけではない。撮影環境が刻々と変化し、ときに過酷な状況下で機材を“使い倒す”ことが前提であるような野外撮影においては、信頼して現場に持ち出せるシステムかどうかが、何よりも重要である。
OM SYSTEMのOM-1とM.ZUIKO PROレンズ群は、まさにその「信頼して使い倒せる機材」を具現化したシステムだ。筆者は、ヨットやボートといった移動体を拠点に撮影を行う機会が多く、船上の揺れ、潮風、湿気、強風といった、カタログには載らない“現場の条件”に常に向き合っている。
本記事では、そうしたアクション中の野外撮影において、OM-1がなぜ“撮影システムの要(カナメ)”となり得るのか、その理由と実体験をもとに論じていく。
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撮影環境は、メーカー保証の範囲に収まらない
野外でのアクション撮影においては、メーカーが提示する仕様や性能保証を超える、より過酷な環境に機材が晒されることがしばしばある。
機材を丁寧に扱う余裕などない。カメラは濡れ、レンズはぶつかり、埃が舞う。湿気と塩分を含んだ空気が容赦なく機材を侵食する。そうした状況では、メーカーが保証する壊れる閾値が高いこと自体が、撮影機材としてのアドバンテージになると、筆者は合理的に解釈している。
一方で、「頑丈」であることを求めすぎた結果、システムが大型化し、重く、携行性が損なわれてしまえば、それもまた野外でのアクション撮影には不向きである。
そう考えれば、小型軽量でありながら防塵・防滴性能を備えたOM-1とM.ZUIKO PROレンズ群の組み合わせは、軽さと耐久性のバランスにおいて極めて優れており、実際の撮影現場において極めて実用的なシステムであると言える。
“壊れない”ことの意味を、もう一度考え直す
多くの人が「壊れないカメラ」を望むが、それが意味する内容は曖昧である。一般的な「壊れない」とは、メーカー想定内の条件下で、丁寧に取り扱われた機材が時間をかけて性能を維持するという意味に過ぎない。
だが、現場ではそんな理想的な条件は成立しない。筆者が求めるのは、「壊れにくい」ことではなく、「壊れるギリギリの環境でも、性能を維持し続けてくれる」ことである。つまり、過酷な状況でも撮影者が信頼し、躊躇なく使えることこそが、機材にとって最大の性能である。
OM-1とそのレンズ群は、筆者にとってまさにそうした存在であり、使うことをためらわない勇気を与えてくれる道具なのだ。
実際に使用しているレンズ構成
筆者が現場でよく使用しているレンズは以下の通りである:
M.ZUIKO 7-14mm F2.8 PRO:屋内や街角での広角記録撮影に。
M.ZUIKO 8-25mm F4.0 PRO:船上での最強広角ズーム
M.ZUIKO 150-400 F4.5 TC1.25× IS PRO:船上での最強望遠ズームレンズ。
M.ZUIKO 300mm F4 PRO:船上での最強望遠単焦点。
これらはいずれも、防塵・防滴性能を持ちながら重量と体積を抑えて設計されており、野外撮影との相性が他メーカーの機種より非常に良い。
特にOM-1との組み合わせにおいては、機動性が飛躍的に高まり、「構えよう」と思った瞬間にシャッターが切れる」という即応性が手に入る。これは、フルサイズ+超望遠ズームでは決して得られなかった感覚である。
船上からの超望遠撮影|300mm F4の実力
OM-1と300mm F4 PROを組み合わせて、揺れる小型船舶の甲板から被写体を追ったとき、筆者はこのシステムの完成度に驚かされた。
強力な手ぶれ補正と被写体認識AFによって、風や波に揺られる不安定な足場からでもかなりブレのない瞬間を切り取ることができた。これは、スペック以上の“実戦力”であり、フィールドワークの信頼性を根本から支える要素である。
誤解なきよう付け加えると、地上での撮影感覚でいえば、船上での撮影はかなりブレてボケている。しかし、それがその場にいた私の臨場感なのだ。
ならば別のメーカーの手振れ防止機能のない軽い機種やレンズでも良いのではないかとの考え方もあるが、手振防止機能がこの世に存在するのであればそれを使用した方がまともな写真が撮れる蓋然性が高くなる。
OM-1は“使い倒せる納得感”が性能そのもの
筆者がOM-1を評価する最大の理由は、「この機材を持ち出すことに、明確な納得感がある」と感じられる点である。
バウで切りで浴びる海水のスプラッシュ、船内でゴロゴロと揺れてぶつかりあうカメラとレンズ、ときには床に落下する事も——それらすべてにおいて、OM-1はいまのところ故障もせずに、しっかりと働いてくれている。
加えて、OM-1やOMシステムの製品は、他メーカーの旗艦モデルと比べて価格が抑えられているという点も、過酷な環境で“使ってみよう”と思わせる重要な性能のひとつである。 高価すぎて気軽に持ち出せない機材では、そもそも冒険的な撮影すら始められない。
スタジオ内や静かな屋外で撮影者の意図を一瞬で具現化できる超高性能カメラとレンズ群は確かに存在するが、まだまだ繊細かつ高額な機器であり、私の使い方ではすぐに壊れてしまい、莫大な出費になりそうである。
私にとって、極端に言えば、撮影が終わり、必要なデータさえ無事に記録されていれば、そのあとでカメラが壊れても構わない。それほど雑で過酷な状況で「最後まで応えてくれる」機材こそが、本当に現場で価値を持つ。
カメラがそこにあることに、納得できる理由がある。それは、スペックの羅列では表せない、使い倒して得た信頼と“選んでよかった”という実感である。
またまた誤解なきよう伝えておくが、使用後は水分や埃を取り除き、湿気の少ない日陰にカメラを保管している。雑に過酷に扱うのは、あくまで現場でだけである。とはいえ、私の所有するカメラの寿命は長くないような気がする。
まとめ|小型・軽量・耐環境性の三拍子
軽量で、堅牢で、取り回しがよく、それでいて画質も妥協がない——OM-1はそのすべてを成立させている。そして、それを支えるM.ZUIKO PROレンズ群があるからこそ、このカメラは単なる1台のカメラではなく、「使い倒せる撮影システムの中核=要(カナメ)」として位置づけられるのだ。
野外でのアクション撮影を志すすべての人にとって、OM-1は“選ぶに足る理由”を備えている。