Sex And The City（以下、SATC）では、登場人物達の職業上の苦労や努力や犠牲は殆ど描かれない。特に4人の主人公達は既に職業上の成功を収めた女性達。彼女達がそのポジションに就くまで、あるいは就き続けるための艱難辛苦は描かれない。なぜならSATCはロマンチックコメディーなだから。
SATCに登場する人物でニューヨーク出身と明示されている人はいない。おそらく4人の主要人物は誰一人としてニューヨーク出身ではない。だとすれば、みな、地方から出て来た人達である。
もしかしたら、Mr.BigことJohn James Prestonはニューヨーク州出身かもしれない。それは、SATCドラマ中に家族が登場した事と、Br.BigのモデルとされるRon Glatiがブロンクス出身である事から推察される。
いずれにせよ、キャリーもシャーロットもサマンサもミランダも、みな地方出身者なのだ。
彼女達はＮＹに来て、キャリアを積んで地保を固めつつ、恋愛やセックスにも頑張っている。その、恋愛やセックスについての場面だけを抽出してドラマに仕立てたのがSex And The Cityなのだ。
だから、このドラマには彼女達の仕事に関する困難や挫折や克服や成長は殆ど描かれていない。
毎年ＮＹにキャリアを求めて地方からやって来る人達のうちのごく僅かの成功例である4人の女性たちの生活の、恋愛や女同志の友情の部分にのみに焦点を当てて面白おかしく描写しているのがSATCというTVシリーズと映画。因みにAnd Just Like That…はそこに加齢と別離という視点が加わってくる。
職業に関わらず、恋愛や女同志の友情以外で深刻な事はほぼ一切描かれないのがSATCなのだ。
『理屈コネ太郎』がそのように断言できる理由は、2001年9月11日に発生した同時多発テロについての扱い方が非常にクリアで明確だから。
驚くべき事に、シーズン4放映中に起きた9.11同時多発テロについては本作では全く言及されていないから（詳細はココをクリック）。
多くの死者が出た9.11惨劇を言及するには、恋愛と女同志の友情に焦点を当てた滑稽で愉快なラブコメディーTVシリーズであるSATCは相応しくない…と制作サイドが考えたのか、或いは、あの惨劇に悲しむ人々の胸に明るい雰囲気を取り戻すためなのか、まったく9.11には触れていないのだ。
しかしながら、SATCは9.11以降のオープニング画像を変更することで哀悼の気持ちを表現していると『理屈コネ太郎』は思っている。
SATCは、恋愛とセックスと女性同志の友情を面白おかしく描写する事だけに徹底的にこだわった作品なのだ。
だから、4人の女性がそれぞれのキャリアを形成するためにどれ程の努力をし、苦しい思いをして来たかの描写は殆どゼロ。ミランダの業務上の苦労について多少の描写があるくらい。
そこそこ成熟した大人の視聴者なら、彼女達の生活ぶりをみて、どれほど苦労して頑張って来たかが推察できるはず。
今回は以上。