医師を目指す高校生達に、初老の現役医師から是非とも伝えたいことがあります。
それは一言で言うと、医師に成る事は皆さんのユニークな能力や可能性を矮小化する事になりかねない…という事。
一人前の医師になるために大変な努力をしても、その結果として得られるのは医師という不自由な立場です。
医師という職業は、あまりクリエイティブではありません。またお金儲けにも向いていません。守らなければならない法律や規範があまりに多いからです。
だから、医師になるのと同じだけの努力をもっと適性ある分野に投入したら、医師になって達成できる以上の大きな可能性を実現できるかもしれない。
今は少しユニークなだけのあなたが、努力を惜しまずに自分の才能を磨いたら”圧倒的な存在感を放つ何者か”になれるかもしれませんが、医師になったらもう一人の平凡な医師が誕生しただけ…という考え方も一度は持って戴きたい。
医師になると言う事は自分の可能性に枠を嵌める事である…という事をすこし考えて欲しい。
公平を期すために言うと、それなりに肌に合う人にとって、医師という職業は生涯を捧げるに値します。しかしそれは、他のあらゆる職業についても同様の事が言えます。
人と話す事が苦手だったり、自分が納得するまで考え抜きたい人にとっては、医師という職業はかなり苦痛に溢れているでしょう。そしてそのことも、やはり他のあらゆる職業について同様の事が言えるはずです。
職業に貴賎なし…と言いますが、アラカンの今になって「それはホントに本当だなあ」と『理屈コネ太郎』は実感しています。社会に存在するあらゆる職業の重要性が実感として腹に落ちるようになりました。
仕事を誠実に遂行している人には、それが誰であれ、どんな職業であれ、感謝の気持ちで頭が下がります。
だから、生活に苦労しないから、社会的地位が高そうだから、あるいは両親や先生が勧めるからという理由で医師を目指す高校生には、「もっと良く考えて」と言いたいのです。
いったん医師として生活したら、医師以外の職業にはなかなか方向転換できません。ほよどの爆発的な才能の持ち主以外は、医師としての生き方でしか生きられなくなります。
なぜなら、医師として生活できるのであれば、わざわざリスクを冒して他の分野に挑戦する意義を感じなくなるし、周囲の人たちも医師以外の生き方を受容してくれなくなるからです。
ある程度一人前の医師として自立して生活できる水準にスキルが到達するには、最短でも約10年にわたる集中的な学習と実践とフィードバックが必要です。
もし、その集中的な学習と実践とフィードバックをもっと自分に向いている分野に振り向けていたら、医師として達成できる以上の幸福な人生を送れる可能性にも目を向けて欲しいのです。
医師は不自由な立場であると既述しましたが、その意味は医師には尊守しなくてはならない法や規範が多数あって、自分自身の幸福を追求する事が時に制限される場合があるという意味です。
こうした法や規範による束縛が、医師の生活者としての可能性を限定的するのです。例えば、医師ではいわゆる金持ちにはなれません。
医師は公的保険診療に従事する限り生活に困窮する事はまずあり得ないですが、せいぜい小金持ち以上にはなれないように社会的な仕組みが作られているのです。
株式会社キーエンス(詳細は”ココ”をクリック)という会社が大阪あります。この会社の平均給与は2183万円/年です(2022年6月提出の有価証券報告書による)。
一方で、お金持ちと言われる事の多い医師の収入ですが(ここでは条件を均一にするために病院に勤める勤務医の給与所得と比較します)日本のトップクラスの病院の勤務医の平均給与が2000万円/年を超える所はありません。
開業医については、年収が高額であっても、テナント料や人件費、機材のリース代などの経費支出があるので、勤務医の給与に相当する所得は不透明なので本頁では触れません。もし興味があるのなら当サイト内に詳細に記述したページがありますから、”ココ”をクリックして読んでみて下さい。
株式会社キーエンスは超優良会社ですが、いわゆる普通の人々が勤務する会社です。その人達の集合知で達成される収益性に、医師達によって達成される収益性は足元にも及びません。
世間で”金持ち”とステレオタイプで捉えられる医師という職業の所得は、その程度でしかないのです。
一方、少数ですが医師が新規事業を立ち上げてビジネスパーソンとして成功した例はあります。そうした医師の殆どは、医師国家試験に合格した時点で医療の世界から立ち去った人達です。
こうした人達を、便宜上ここでは医師免許保持者と呼ぶ事にします。また、医師という言葉を、医師免許を持つ事に加えて患者を医学合理的に診療するに十分な経験と知識を持った者に対して使用することにしましょう。
ビジネスで成功した医師免許保持者は、事業を起こして成功しているので、彼らにとって医学部に進学し医師免許を取得することは余計な回り道でしかありません。
「じつは医師免許をお持ちなんですね、凄いですね」と言われる程度のメリットしかありません。これはビジネスに成功した複数の医師免許保持者から直接聞いた話です。
彼らはこう言います、「医学部に行って勉強している時間と努力をビジネスに向けていたら、もっと大きな成功を達成していた筈だ」と。
医師になるための集中的な努力は質も量も膨大なので、その努力の結果として活躍が制限され上に小金持ちの医者にしかなれないのはワリが合わない…と彼らは言います。
医学に魅了されていない人にとって医師というのは本当につまらない職業なのかもしれません。
医師として長年活動してきて、彼らのこうした意見にも一理あると『理屈コネ太郎』は思うのです。
もしもっと自分を魅了する分野に対して、医者になるのと同じくらい集中的で膨大な努力を投入したら、医者として実現できる以上の大きな達成感や幸福を実現できるかもしれない…と一度考えて欲しいと『理屈コネ太郎』は思います。
今後、世界はますます実力本位の社会になっていくでしょう。
情報が乏しかった時代には学歴や職歴などの履歴書的情報が一定程度の意味をもちましたが、これから(すでに今も)は直近の仕事のクオリティーを目の前で再現して実力を証明できる時代になりつつあります。
「あなたは何が出来ますか?」と問われ時に、「これまでこんな事をやって来て、こんなスキルを持っています。だからこんなふうに貢献できると思います」とパパっと質問者の眼前で再現して実力を証明できる時代には、学歴や職歴などの情報は陳腐だし、経歴詐称の可能性を考えると有用性は低下の一途でしょう。
本当の実力はいつの時代でも求められてきましたが、それを証明する客観的手段が学歴しかなかった時代ではもはやありません。
そして本当の実力というものは、没頭しないと身につかないものです。
一度きりの自分の人生の可能性を最大限に顕現する事がもし人生の目的の1つなら、そこに至るまでの経路を現時点まで逆算して考えたとき、医学部進学がその経路上に合理性をもって存在するか見極めて欲しいと思います。
もしかしたら、医学部進学は無駄な回り道かも知れません。
もちろん、いったんとりあえず医学部に入学して学生の間に色々と考えるのも一手ではあるでしょう。
経済的に許容されれば留年も悪くないかもしれません。教室で押し付けられる一方の医学の勉強と他人の目が精神的に非常に苦痛なのを我慢できれば…ですが。
とりあえず医師になって、現場でスキルを身に着けて医師として自立できる段階になってから色々と考えるのもアリです。ただし、人生のこの時期には、もう医師以外の生き方は出来なくなる事が殆どでしょう。
仮に他分野に道を求めたいと思っても、配偶者や学資提供してくれたご両親を説得するのは大変な大仕事になるはずです。
世界は常に社会に貢献する人を求めています。自分がどう社会に貢献して、その貢献をどうやって収入に結び付けるかは人それぞれです。
とはいえ努力は相応に実って欲しいし、可能なら努力以上の成果を得て欲しい。
繰り返しますが、一人前の医師になるための努力は膨大です。おなじだけの努力を他の分野に投入したらもっと豊かで有意義な人生を得られる可能性がある事も、よくよく考えて欲しい。
自分の人生を生きるのは自分自身。医学部進学を勧める教師やご両親はあなたの人生を生きてはくれません。
自分の可能性の最大限を実現してほしいと思っています。
『理屈コネ太郎』自身は医師になって良かったと思います。私の場合は本気で医師になろうと決意するまで、他の人より10年位長い時間がかかりました。でも、その期間で十分に自分自身の葛藤にケリをつけていたのがよかったかもしれません。
医師になろうと決意して以降は、それ以外の可能性を考えたり迷ったりすることは全くありません。
初老となって、これまでの人生を振り返ったり、今後のビジョンを考えたりするうえで、自分が今医師である事にはメリットしか見いだせません。
でもそれは、私の場合の話に過ぎません。
以上
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