まず、手元にあるプレスラインがはっきり映っている写真を供覧しよう。(写真1)
私が疑問に思っているプレスラインを太線で囲んだ。(写真2)
なぜ後ろに行くほどプレスラインが下がっているのだろうか。後ろに行くほど上がったほうがカッコいいと思う。この点については、後ほどGRスープラのサイドラインと比較する予定である。
せめて水平にしてほしかった。スポーツコンパクトカーにこのような後ろ下がりのプレスラインが走ることは信じられない。正直なところ、非常にガッカリしている。
世間で出回っているGRヤリスのカッコいい写真は、ほとんどがこのプレスラインが目立たないように撮られたものである。以下の写真3はおそらくトヨタの広報が提供したものと思われるが、GRヤリスがカッコよく見える。ただし、私が指摘したサイドの後ろ下がりのプレスラインは、撮影時のシャドーで巧妙に隠されている。
次に、後期型のWebカタログから拝借した画像(写真4)を見てみると、このプレスラインはフロントガーニッシュから始まり、ヘッドライトの上端を経由して1つの曲線を形成している。つまり、車の側面を半周以上回るラインが後ろ下がりになっているというわけである。
「はぁ? 飛行機じゃないのだから…」という気持ちでいっぱいだ。
地面を疾走するスポーツカーの外観デザインは、地表にへばりつく空気をまるで剃刀で切り取るかのように、前方へ薄くシャープなイメージを観る者に抱かせた方が商品力は高いはずだ、と理屈コネ太郎は思っている。
もしかしたらスポーツコンパクトの外観デザインに新機軸を打ち出したい野心的なデザイナーでもいたのかな。
ところで、このサイドの後ろ下がりのラインは、わずかだけど4ドアのヤリスにも見られるので、GRヤリスとヤリスのデザインコンセプトを共通化できる、たぶんけっこう偉い立場のデザイナーの意図だと推察する。
さて、いったん勝手は想像をやめて、話題を先に進めよう。
理屈コネ太郎は下の写真5の青線で囲ったプレスラインにも違和感を強烈に感じている。
このプレスラインは、リアオーバーフェンダーを視覚的に強調しようとしているようですが、二重線(三重線にも見える)で構成されていて、実際のフェンダーの膨らみよりもその立ち上がりの凹みの方が強調されてしまっている。
この違和感のインパクトは、時々見かける白目剥いてる様に見えてしまうギャルの下瞼目尻のアイラインのよう…といえば伝わるだろうか。
わかりにくい?
それは申し訳ない。
そして、この後ろ下がりのプレスラインとサイドのプレスラインがぶつかり合っているように感じられて(写真6)、自動車の横顔にあるべき疾走感が、ここで阻害されている。(写真6の米印部分)
下に前期型GRヤリストヨタ広報の写真を再掲する。(写真7)
サイドの後ろ下がりプレスラインと、リアフェンダー立ち上がりの二重プレスラインが絶妙に隠されて、疾走感があり、フェンダーの膨らみがハイライトになっている。
ルーフライン以外は、後ろに行くにしたがってしり上がりだ。
理屈コネ太郎が指摘する二つのプレスラインが衝突して疾走感が阻害される箇所を全く見る者に意識させない写真になっている。
この広報写真では、プロのカメラマンと画像処理の達人によって疾走感とフェンダーの膨らみが強調されてるが、実際の車を見ると、私が指摘した違和感が目立つのです。
そして、違和感としては理屈コネ太郎的に最上位に位置するのが、下の写真8で赤色のラインで囲んだ平面的な造形だ。
この部分は、まるでデザイナーがデザインを放棄したかのように感じるほど、連続して隣接する造形と統一感がない。
同様の平坦さを敢えてGRヤリスの他の部位に探すとすれば、それは…
ココ!(写真8)
リアフェンダーエンドのなんのデザインも見られない平坦な造形。
この部分もまるでデザイナーが仕事を放棄したのでは?…と、思うほど隣接する造形と連続性や整合性がない。
プロデザイナーの仕事に対して、甚だ僭越で失礼を承知で敢えて申し上げてしまうと、GRヤリスのデザインは芯の部分でけっこう破綻している…ように思われる。
だからなのか、ここにエアダクトのパーツを組んでこの破綻を修復するオーナーが多いのは。それは現在では定番カスタムと言っても良いのではないだろうか。
さて、ここまでは、市販車であるGRヤリスに対して、理屈コネ太郎が個人的な印象に基づいて文句を言ってみた。
ここからは、視点を変えて「もしかしたら」のハナシをしてみたい。
GRヤリスがレース車両を基点に開発されたクルマだとしたら、外観デザインもレースで戦う事を念頭に構築されたはずだ。
もしレース車両としてある一定の完成を遂げた外観デザインがあったとして(例えば写真10のRally2のような)、そのデザインを市販車にまで落とし込む作業をしたときに、現在の外観デザイン(市販車としては違和感満載なデザイン)になってしまった…とは考えられないだろうか。
Rally2の画像をGAZOO RACINGのwebから拝借して3枚並べてみよう。(写真10)
フロント地上高が下げられると(レーキ角…と言いましたっけ?)、例のプレスラインの後ろ下がりが目立たなくなり(依然として若干後ろ下がりではあるが…)、リアフェンダーの膨らみ始めのラインとあまり衝突しない。
斜め後ろからの画像(写真11)では、リアフェンダーエンドの処理がエッジの効いた部分と丸められた部分とで立体的造形を作りだし隣接部位との統一感を成立させている。
そして、写真12にみられるようにリアスポイラーステーの形状とCピラーの平坦さにも連続性と整合性があります。このスポイラーに空気を導くために、あえてCピラーを平坦にしたのでは…と思わせる整合性が。
斜め前から見ると、やはり後ろ下がりのサイドのプレスラインがハッキリと見えるが、それがRally2では独特の存在感を醸し出しているように思える。
ここで仮に、前述のようにRally2がレース車両の外観の一つの完成系だと仮定してみよう。
このRally2から、リアスポイラーと前後のオーバーフェンダーを取り去り、前後の車高も市販車らしく水平にしたとしたら…私たちが良く知る市販車のGRヤリスが出てくるのではないだろうか。
そうであれば、デザイナーが仕事を放棄したと思えるようなヘンテコな平面も、フェンダーの膨らみよりも凹みを際立たせる二重のプレスラインも、疾走感を阻害する後ろ下がりのサイドのプレスラインも、そしてそういう違和感を絶妙に隠したTOYOTAのプレス写真も、すべてなんとなく納得がいく。
市販車GRヤリスの違和感あるデザインはレース車両の名残であり、プレス写真は市販品の美点を強調するのが目的だから違和感ある箇所は目立たないように処理されるのだろう(後期型プレス写真ではその意図が薄くなった?)。
そうだ、きっとそうだ。そういう事なのだ。それで納得。もお決まり。今後一切そういう事にしよう。
ああ、これでスッキリした。
これまで、GRヤリスの、あの全く違和感のない素晴らしいドライブフィールを知る理屈コネ太郎にとって、外観の違和感はどうしても飲み下せない喉に刺さった魚の骨のようなものだった。
でも今は飲み下せた…気がする。っていうか、内視鏡で摘除してもらったくらいスッキリしている…ように感じる。でも、骨が刺さっていた場所は軽く、だけどこれからもずっとヒリヒリし続けるような気がしている。
本ページは、理屈コネ太郎がGRヤリスの横顔に抱く違和感と、それに納得するって内容でした。
【後記】参考までにGRスープラの外観について少し管見内の独断と偏見による私見、すなわち知ったかぶりを述べてみる。
下に示すのは、GRスープラを斜め前と斜め後ろから見た画像である。いつものように、画像はトヨタwebカタログから拝借した。(写真13&14)
GRスープラは発表当時賛否で沸いたスタイリングであり、たしかに奇抜な実験的試みと思える造形がテンコ盛りでああるのだが、スポーツカーの横顔が持つべき疾走感を後ろ上がりのサイドのプレスラインがピシっと表現しているので、この一見ヘンテコな造作のクルマを見事にスポーツカーに仕立てている。
だから最初は違和感あったけど、なんか最近カッコよく見えてきた…という人は多いのではないだろうか。理屈コネ太郎もその1人である。
デザインというのは、かくも人間心理に効くのだ。外観、恐るべし。美女やイケメンがモテるのも道理である。
今回は以上ん。
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