本ページでは、職業としての消化管内視鏡医(巷間、胃カメラとか大腸カメラと呼ばれる検査を実施する医師)の魅力を医学部生あるいは初期臨床研修医を対象に、『理屈コネ太郎』の臨床経験20有余年の経験をもとに述べてみたい。
本ページでは、胆・膵を対象とする内視鏡検査については除外している。消化器内視鏡とせずに消化管内視鏡との用語を用いる所以である。
さて、消化管内視鏡の魅力は、
①手技に於いて他科医師との差別化が容易、
②ある程度のレベルに到達すれば食いっぱぐれない、
③入院を要する症例が少ないので医師のQOLが高い、
④一生を捧げるに足る将来性。拡張性、難易度、専門性がある、
の4点に集約できる。
①について
消化菅内視鏡検査は他科の医師が見よう見まねで出来る手技ではないので、上部および下部消化管内視鏡検査を施行出来るというだけで、十分に他科の医師と、あるいは消化器内視鏡が不得手な消化器科担当医師との差別化を図る事が出来る。
②について
消化管内視鏡検査において一定の力量に到達したら、おそらく消化器内視鏡医として食いっぱぐれる事はないだろう。健康診断や人間ドックで上部消化管内視鏡を求める企業や個人や多いし、そうした要望に応えて内視鏡をメニューに取り入れる健診施設は多い。
上部内視鏡検査では観察のみでも存在診断を含めて適切に素早く実施できる力量があれば生活に困窮する事は多分ないと言えるくらい求人は多い。
下部消化管内視鏡検査は検査手技そのものの難易度が高いので、盲腸到達率ほぼ100%の力量があれば、余程の贅沢を言わない限り就職先がないということはない。
③について
消化感内視鏡検査は、殆どの場合に定時に始まって定時に終了して、かつ入院が必要となるケースは少ないので、内視鏡医のQOLが極めて高い。
勿論、医師となったからには医学に一生を捧げるのもよいが、人文社会系科学や芸術・文学に興味の枝を拡げてて人間の幅と深さを求める医師におススメ。あるいは、仕事と趣味を切り離して生活したい人にも向いているだろう。さらに女性医師の妊娠・出産・育児後の復帰についてもやり易い診療領域だと思う。故に女性にもおススメである。
④について
消化管内視鏡の歴史はそれほど長くない。しかし今日までに積み上げられた膨大な症例数と知見を基にと内視鏡医の探求心を原動力に、検査手技、診断技術、治療手技はますますfine and complicatedになっていくだろう。
研究が進むほど未知の領域が広がるので、いまから参加して研究成果を挙げる余地がこの領域には多く残されている。
また、『理屈コネ太郎』が消化管内視鏡に魅力を感じているのは、こうした奥深さとともに、悪性腫瘍の診断と治療に頻回に遭遇することである。
特に下部消化管内視鏡においては、検査中に発見したポリープを切除・回収して病理検査にまわしたら悪性腫瘍が中に入っていたというケースは珍しくない。
ポリープの断端に悪性腫瘍が認められなければ、経過追跡は必須であるが、とりあえずはそれで癌の治療は一旦は完遂と考えられる内視鏡手技のパワフルさも素晴らしい。
癌はその定義上、上皮から発生する悪性新生物なので、消化管の内腔側から発生する。内視鏡以前の検査・診断技術では発見が極めて困難な小さな病変に対しても、消化管内視鏡は検査と治療を実施する事が出来るのだ。これはコペルニクス的転換だと思う。
日本人の死因の大きな部分を占める癌の治療にこれほど直截的にアプローチできる手技は他にはなかなか存在しないと思う。しかも、消化管内視鏡検査は殆どの場合に放射線透視装置を使用しないので、設備も比較的軽装備で済ませられるのも素晴らしい。
以上、消化管内視鏡医の職業としての魅力を4つの観点からまとめてみた。医学の守備範囲は広い。消化管内視鏡以外にも、上記4点において優れた特質を持つ診療領域はあるだろう。
せっかく医学の道に進み、また進路に逡巡できる時期である僥倖に恵まれた諸君に、”ああ消化管内視鏡医もいいかも?”と思っていただけたら幸甚これに勝るものはない。
ココをクリックすると、サイト全体のトピック一覧のページにいけます。
ココをクリックすると、若き医師・研修医へのメッセージのページにいけます。