看護師の賃金体系で驚いた事

『理屈コネ太郎』はあと少しで60歳。一般企業なら定年である。

そこで60歳になったらそれまで社会人として持ち続けてきた問題を解決するためのビジネスを起業しようと考えていて、そのための勉強に最近は励んでいる。

起業したら法人相手のビジネスになると思うし、その場合は人事や総務の人達と向き合う事になるだろう。そういう人達に「え、なに、この人、そんな事も知らないの?」と思われないための勉強だ。

具体的には、労働基準法と労働組合法、賃金関連法、メンタルヘルス、産業心理学、組織心理学である。

特に、労働基準法、労働組合法、賃金関連法は基本のキからやっている。もちろん、その領域の専門家をになるわけではないので、大学学部レベルのテキストなどは読まない。

就職して総務や人事に配属された人が読むような簡潔でポイントを衝いた平易な教科書を読んでいる。ざっと数回通読して土地勘を持てれば上出来って感じの学習である。(学習法の提案へは”ココ”をクリック)

そんな生活の中で看護師の賃金について大変に驚いた事があるので紹介したい。

いわゆる看護師は全国に約150万人免許者保持者がいる、医療界最大のプロフェッショナル職種である。

さて、そのいわゆる看護師には、看護師(看護師についての外部サイトはココをクリック)と准看護師(准看護師についての外部サイトはココをクリック)の2つの資格がある。

看護師は医師の指示のもと業務をおこなうが、准看護師や医師または看護師の指示のもと業務を行うと法的に決まっている。

因みに看護師は国家資格だが、准看護師は都道府県資格だ。

誤解を恐れずにいえば、准看護師は看護師よりも下位に位置づけされるわけだが、実際の業務現場ではこの2者の区別は殆どつかない。

採血、注射、点滴、アセスメントその他、業務内容は一緒である。優秀であれば看護師も准看護師も関係ないのだ。

しかし、向上心のある准看護師は色々な考えから看護師資格を取得する。だって向上心があるのだから。

ここで驚く事が起きる。

看護師資格を取得したら、それまで准看護師として勤務してきた年数がチャラになり、看護師1年目として給与計算されてしまう事が、医療機関によってはあるのだ。

管理職になると残業代がつかなくなるのとは違う。それまでと同じ人物が同じ職場で同じ職位で同じ業務内容なのに、資格を取得すると勤続年数がチャラになることがあるという。

たとえば、准看護師として10年勤務してきた人が、看護師になったら1年目の看護師として給与計算されるのだ。

で、場合によっては手取り給与が低下するケースもあるらしい。

こんな愚かな賃金体系があるだろうか。

努力してステップアップした人の手取り給与が低下するのは誠に不合理である。

そして、この不合理な処遇を受けるのは少数のステップアッパーだけなので、この問題を指摘する声は大きくならない。

病院経営側も能力が高くなった人に逆に賃金を抑える事が出来るので問題にしたくないのかも…。

問題はこれだけではない。

一部の准看護師は、一時的にせよ手取り給与が低下することを「損である」と捉えるかもしれない。

こういう人達は、おそらく准看護師のまま勤務年数を重ねて年をとり、職位で後輩の看護師達に抜かれていく。

しかし先述の事情から、いまさら看護師になってそれまでの勤続年数の実績をチャラにしたくない。

よって勤続年数が長いほど、年齢が高いほど、准看護師は准看護師のままで居続けるという逆インセンティブが機能するのだ。

不思議な世界である。

こうした賃金体系が形成され合法でありつづけたのは、おそらく歴史的な事情もあるのだろうが困ったものである。

そこに日本に在り勝ちな歪んだ長幼の序が加わると誠におかしな現象が起きる。

定年後再雇用された准看護師が、ほぼ新卒で入ってきた看護師を苛め倒して退職に追い込むという、そばで見ていて胸が痛くなるような現象だ。

勿論、定年後再雇用の准看護師にも人材を育成する事が上手な人は沢山いる事は所与の前提としてお話している。

が、それでも、看護師の離職率の高さは、こうした歪な賃金体系にも原因があるかもしれない。

と、そんな気付きが最近ありました…というオハナシでした。

今回は以上。

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